<社説>マンション傾斜 新たな監視システムを


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 一生に1度の買い物で、欠陥商品をつかまされてはたまったものではない。横浜市のマンションで基礎工事の施工不良を原因とした傾斜が見つかった問題で、住への不安が広がりつつある。

 2007年末に完成した横浜のマンションは、地中に打ち込んだくいの一部が強固な地盤まで届いていないのに、届いたようにデータを改ざんしていた。さらにくいの先端を固めるのに使うセメント量のデータを改ざんしていたことも判明した。
 施工会社の責任は重く、トップらが謝罪会見をしたが、まだ責任を果たしたとはいえない。一刻も早く、疑いのあるマンションを全て公表し、対策を取るべきだ。
 施工会社によると、マンション傾斜の原因となったくい打ちは、8人一組で作業し「現場代理人」である技術者がデータを確認しながら強固な地盤に届いたかなどを判断する。残る7人はデータ確認や機械操作を担当するという。
 問題は建物の基礎となる重要な工事を1人の人間に任せきりにし、第三者のチェック機能が働いていなかったことだ。現場での管理態勢を見直す必要がある。
 マンション建設は完成まで工事内容が多岐にわたるため、発注者から元請け、下請け、さらには孫請けなど関連業者も数多くいる。そのために元請けは「工事監理者」を現場に常駐させ、仕様通りに進んでいるか確認する義務がある。
 国土交通省の「工事監理ガイドライン」によると、立ち会い、書類、抽出の方法で実際の工事と設計図書、仕様書が合致しているか監理者は確かめなければならない。元請け会社がそうした義務を果たしていたかも検証が求められる。
 さらに業界全体の問題にも目を向けるべきだ。横浜のマンションが建設されたのは、マンション着工件数が右肩上がりで「マンションブーム」といわれた2000年代半ばだ。完成を急ぐ余りコストダウンや工期短縮の圧力はなかったか。05年に発覚したマンション耐震偽装問題はそうした圧力が背景にあった。業界全体で無理を強いる構造がなかったか点検が求められよう。
 一生をかけて返済する住宅ローンを組んだ購入者にしてみれば、不具合のあるマンションを買わされるのは「詐欺」にも等しい。再発を防ぐためにも、重要な工程では行政も含めた第三者の確認など新たな監視システムが必要だ。