<社説>島嶼とエネルギー 未来像を沖縄で創りたい


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 自然エネルギーで全て賄う時代は目前に来ている。そう実感した。

 在日フランス大使館とアンスティチュ・フランセ日本が沖縄科学技術大学院大学(OIST)で討論会を開いた。再生可能エネルギーの研究・利用をめぐる最先端の実例の数々が目を引いた。
 フランスのブタン、バランドラ両氏はインド洋の仏領レユニオン島の挑戦を紹介した。驚いたのは、8千人が住むこの島が再生可能エネルギーで既に全体の30%を賄っており、5年後には50%にするという点だ。
 低温の海洋深層水の活用と自然風を取り入れた設計で、熱帯に位置する島なのに空調無しの建物を創り出した。新エネルギーも大胆に導入する。太陽光発電パネルが並ぶ隙間に薬草などを植えた「アグリネルジー」が圧巻だ。農業と自然エネルギーの融合という発想が革新的だった。風力や太陽光は発電量の安定が課題とされ、安定化には蓄電池が重要だが、その技術進展も目覚ましいという。
 一方で、沖縄での最先端の研究にも目を開かされた。
 北野宏明OIST教授の実証実験が画期的だ。各家庭の発電システムをつないで電気を互いに融通し合う「直流(DC)マイクログリッド」は、誰も管理せず、システム自体で自律的に稼働する。10カ月運用し、電源が落ちることは全くなかったという。消費者が自らエネルギーを生産する社会の構築は間近だと実感した。
 新竹積(しんたけつもる)OIST教授の話には刺激を受けた。潮流は予測可能だからそれによる発電は風力と違い安定的に使える。空気と比べ密度も濃いから発電量も桁違いだ。潮流発電300台で原子炉1基に相当するエネルギーを生み出せる。沖縄は海に囲まれ、近くに黒潮も流れる。豊富な資源を持つ地なのだ。
 コストが難点だが、克服は十分可能ではないか。2020年までに波力と風力、太陽光と水素ガスで一つの島の全エネルギーを賄う仕組みを沖縄でつくりたいという新竹氏の思いは、沖縄の夢でもある。
 島嶼(とうしょ)の人々は土地の有限性を日々実感している。だからこそ自立型・自己完結型エネルギーへの望みも強い。だから先進的な仕組みの導入に耐性がある。その優位性を生かしたい。野心的な目標が必要だ。その必要性の認識を広く共有し、機運を高めよう。エネルギーの未来像を沖縄で創り出したい。