<社説>無通告で訓練準備 域外実施の即時禁止を


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 米空軍が10日に座間味村の久場島でボートを使ったレスキュー訓練を実施しようとした。米軍への提供区域の外である。

 提供区域外での訓練はことし頻発している。野放図に訓練区域を広げることは断じて許されない。政府は厳しく抗議する必要がある。区域外訓練の禁止を取り決めるべきだ。
 提供区域内での訓練であっても使用期間などについて日本側に事前に通告することになっているが、今回はそれすらなかった。県などの中止要請を受けて訓練場所を変更したというが、米軍は訓練場所についてどのように認識しているのか疑問だ。
 今回の訓練は米空軍嘉手納基地の第31救難中隊が座間味村の無人島の久場島で10日に実施しようとしていた。8日に阿嘉島の国立公園ビジターセンターに空軍関係者が訪れ、ボートを置かせてほしいと要請したという。
 村からの情報で県が沖縄防衛局に照会し、米軍から「久場島付近で模擬患者を乗せたボート訓練」を実施すると回答があった。
 県などからの中止要請によって米軍は「久場島付近での訓練を除外するよう変更した」としている。
 ことし3月、提供区域外の名護湾で米海軍がヘリコプターを用いてつり下げ訓練を実施した。低空飛行で海上を旋回したり、ホバリングしたりし、海面すれすれの高度からのロープによる引き上げなどが確認された。
 現場は漁場でもあるが、この際も事前通告はなく、地元漁協は訓練の実施を把握できなかった。
 3月末には、これも区域外の北谷町砂辺海岸沖で米空軍嘉手納基地の第18航空団が夜間にヘリコプターを用いた捜索救助訓練を無通告で実施。近くには操業中の漁民がおり、危険を感じたという。航空団は否定したが、ヘリから落下物があったとの目撃情報もある。
 名護での訓練を受けて林芳正外相は「実弾射撃等を伴わない米軍機による各種訓練については提供施設・区域外で行うことは認められている」と述べ、区域外訓練を容認している。
 米軍の裁量を広げるものだ。提供区域を設定している意味が分からなくなってしまう。米軍の都合によって、訓練の実施場所は際限なく広がることになる。那覇軍港へのオスプレイの飛来など、従来はなかった運用が散見されており、決して杞憂(きゆう)ではない。
 外務省は訓練場所についての規定は地位協定にはないとの認識だが、それでは提供区域外の訓練を認める根拠もないことになるのではないか。
 そもそも、訓練の場所などを制限してきたのは住民生活との兼ね合いであるはずだ。住民の安全を守るためにほかならない。これが脅かされているのだから、提供区域外での訓練の即時禁止を取り決めるのが筋だ。