<社説>基地の負担軽減 二重基準では成し得ない


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 政府は地元の理解が得られないとして、米軍普天間飛行場所属オスプレイの訓練を佐賀空港に移転する計画を取り下げた。

 当然である。地元が反対することを強引に押し付けてはならない。だが、その当たり前のことを政府は沖縄にはやらない。あからさまな差別と言わざるを得ない。
 中谷元・防衛相は記者団に「二重基準では」と問われたが、そのことには答えなかった。他県の意向は尊重するが、沖縄の声は一顧だにしないとあっては、納得いく説明などできるわけがない。
 政府がこんな理不尽な二重基準を弄(ろう)しては、沖縄の負担軽減は成し得ない。政府は改めるべきだ。
 防衛相は陸上自衛隊オスプレイの佐賀空港配備に関し「尖閣諸島周辺への領海侵犯が常態的に発生している」「佐賀空港に配備すれば、補給せずに南西諸島へ展開できる」と強調している。
 島嶼(とうしょ)防衛は自衛隊の役割と明記した新ガイドライン(日米防衛協力指針)に沿った発言であろう。防衛相は図らずも尖閣防衛に在沖米海兵隊は要らず、新基地も必要ないことを証明した。陸自オスプレイが佐賀空港に配備される予定の2019年度に、普天間飛行場は閉鎖できるということである。
 防衛相は山口祥義佐賀県知事との会談で「佐賀県に負担が集中するような利用は考えていない」と述べた。全国の米軍専用施設の74%が集中する沖縄にも、その考えが基本にあってしかるべきだ。
 菅義偉官房長官はグアムを訪れ、「海兵隊のグアム移転が実現すれば、沖縄の基地負担が目に見える形で軽減される」とアピールした。
 グアムには在沖米海兵隊約1万9千人のうち、約4千人が移転する計画である。真の負担軽減とは程遠い一部移転を、さも大きな成果とし、政府が沖縄の負担軽減に取り組んでいるような印象操作はやめるべきだ。
 政府が普天間飛行場の辺野古移設の理由にする「一体的運用の必要性」とも矛盾する。完全移転を目指すべきだ。
 在沖米軍の訓練を移転しても外来機が飛来し、州軍までもが沖縄で訓練することを政府が容認しているため、負担はかえって増えている。訓練や一部部隊の移転など小手先の対応では、真の負担軽減にはならない。政府が真剣に負担軽減を考えるならば、普天間飛行場を無条件閉鎖すべきだ。