<社説>南西石油事業停止 雇用や供給に万全期せ


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 ことし4月に石油精製事業を停止した南西石油の経営に不透明感が増している。同社の状況を見守りつつ、県内での石油供給体制の安定や従業員の雇用対策に関係機関は万全を期してほしい。

 ブラジルの国営石油会社ペトロブラスの子会社である南西石油(西原町)が、取引先の県内石油卸業者らに文書を出して、11月からガソリンや灯油、重油などの販売価格を引き上げると通知していた。
 さらに文書では「2016年3月31日末以降、石油製品販売契約を一切更新しない」と来年春で県内での販売事業を終了することも伝えている。同社の石油製品の販売シェアは県内市場の約6割を占めるとされており、販売停止に伴う影響が心配される。
 同社は1968年に設立され、72年に製油所の運転を開始した。2008年にペトロブラスの傘下に入り、一時は輸出を増やすなど事業を拡大させたが、近年はガソリン需要の低迷や原油価格の下落などの影響で採算が悪化した。
 4月に石油精製を停止して以降は、石油製品の購入・貯蔵、販売事業を継続してきたが、今回の文書では調達価格が販売価格を上回る「逆ざや」などで多額の損失を計上していると説明した。
 ペトロ社は日本からの事業撤退を表明しており、南西石油を売却する方針だが、譲渡先選びは難航している模様だ。ペトロ社は本国での汚職疑惑への対応などに追われているという。
 難航する背景には老朽化した南西石油の設備改修などの問題もあるという。県内最大の売上高を誇る企業の行く末が海外親会社に左右されている現状にもどかしさも禁じ得ない。
 200人近い従業員の間では雇用確保への不安が強まっている。当然のことだろう。売却など今後の事業展開が不透明であり、労働組合にも退職金や再就職などに関する具体的な説明はまだないという。ペトロ社を含む経営陣は真摯(しんし)に対応すべきであることは言うまでもない。
 この問題では県や沖縄労働局なども、会社側からの情報提供がないため手をこまねいているのが現状だ。だが受け身の姿勢ではなく、ぜひとも積極的に関与してもらいたい。同社の動向を見極めつつ、雇用確保や石油製品の安定供給に向けて迅速かつ適切に対応できるよう備えておく必要がある。