<社説>久辺3区の振興費 新基地計画と絡めるな

 新基地建設に向けた政府の姿勢は常軌を逸している。その強引な手法は地方自治をも破壊しかねないものであり、極めて問題だ。

 政府は米軍普天間飛行場の代替となる名護市辺野古の新基地建設をめぐり、同市の辺野古、豊原、久志の「久辺3区」が進める地域振興の事業費を直接交付する方針を3区の区長らに伝えた。
 建設予定地に隣接する3区は、名護市に計55ある行政区の一部だ。国が自治体を通さず、財政支援するのは異例であり、地方自治への介入にほかならない。札束で地域の分断を図るような手法に憤りを覚える。
 政府としては、新基地建設に反対している名護市の頭越しに3区を支援することで稲嶺進市長らをけん制するとともに、国民に普天間の移設事業が進展しているとアピールする狙いがあろう。
 防衛省は本年度予算から3区にそれぞれ1千万円ずつ支出する方向で調整している。基地所在市町村に支給する「特定防衛施設周辺整備調整交付金(9条交付金)」などをモデルに、交付対象を行政区に拡大する方向だが、その法的な根拠ははっきりしない。
 9条交付金に基づく事業は自治体を介して行うのが通例だ。交付対象の拡大には財政規律上、疑問が大きい。国会での審議もないまま、政府内の手続きだけで制度が見直されていいはずがなかろう。交付金の原資は国民の税金だ。
 そもそも国の施策に反対した自治体を無視して、地域住民への交付金を恣意(しい)的に動かせるような仕組みは地方自治の精神を否定するものだ。復帰前、米統治下で住民の懐柔策に利用された高等弁務官資金と何ら変わらない。これで「法治国家」(菅義偉官房長官)と言われても、噴飯ものだ。
 久辺3区から振興事業として要望が挙がったのは、防災備蓄倉庫の整備や放送設備の修繕、芝刈り機の購入などだった。いずれも通常の地域振興事業として支援すべきものではないのか。仮に3区だけ、移設の諾否でその実施が左右されるとしたら差別以外の何物でもない。
 政府は翁長雄志知事による埋め立て承認取り消しの効力を停止させ、新基地の本体工事に着手するなど強権色を鮮明にしている。振興策を盾にさらに地域を揺さぶるようなまねは許されない。基地と振興はリンクしないと繰り返してきたことの責任を負うべきだ。



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