<社説>高校生政治参加 主権者意識育てよう


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 文部科学省は公選法改正で選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられたことを受け、高校生が放課後や休日に校外で行う政治活動や選挙運動を容認する通知を、都道府県教育委員会などに出した。

 2016年10月時点の18、19歳人口の推計によると、全国236万3千人のうち、沖縄は3万3千人が該当する。若者の政治参加拡大へ向け一歩前進だろう。主権者意識を育てる環境整備に力を注ぎたい。
 今回の通知は、高校生が「国家・社会の形成に主体的に参画していくことがより一層期待される」とし、高校生の政治活動を厳しく制限した1969年の通知を廃止し、デモへの参加など校外での活動を認めた。
 一般的に日本の若者は政治に無関心とみられている。しかし、安全保障関連法案の審議中に多くの高校生や大学生がデモに参加したり、米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する集会に参加したりするなど政治への関心の高さがみられる。
 背景に政治不信があるのだろう。例えば、安保関連法案審議中、安倍首相が野党議員に「早く質問しろよ」と、一国の代表としてふさわしくないヤジや、自民党議員が「マスコミを懲らしめる」といった発言が相次いだ。安倍政権下で数の力を背景に反対意見を封じる反民主的な政治手法が際立っている。
 政治不信を払拭(ふっしょく)するための一つの手法が選挙である。現状に不満があるなら、主権者が望ましい代表を選び直す。選挙で1票を行使することである。これまで高校生はデモには参加したが政治家を選択する権利は与えられなかった。これからは自分たちの将来に関わる政策決定過程に参加して主張できる。
 ただ、今回の新通知は高校生の政治活動について「必要かつ合理的な範囲内で制約を受ける」としている。権利を与えながら制限するやり方はおかしい。
 かつて沖縄は、自治権を制限する米国統治に抵抗した。日本復帰を求めるデモ行進に多くの高校生が加わり、沖縄の行く末を考える過程を経験して「大人」になった。大事なことは、主権者となるための政治的な教養を身に付けられる教育環境を整えることである。しっかり政治判断ができる「大人」を育てるために、何が必要なのか知恵を絞りたい。