<社説>日中韓首脳会談 信頼醸成へ対話を重ねよ


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 首脳会談は真の友好関係構築への第一歩にすぎないが、実現にこぎ着けたことを歓迎したい。

 安倍晋三首相と中国の李克強首相、韓国の朴槿恵大統領による首脳会談が韓国で開かれ、「歴史を直視し、未来に向かって進む精神」で地域の安全と平和に向けて努力することで一致した。3カ国首脳会談の定例化と来年の日本開催も確認した。
 日中韓首脳会談は実に3年半ぶりだ。2008年から各国の持ち回り開催となり、年に1回程度開かれる予定だったが、尖閣諸島をめぐる日中間の対立や歴史認識問題などで開催が見送られていた。
 3カ国首脳会談の狙いはそもそも、2国間で懸案があっても、3カ国で協力しやすい貿易や環境分野などで議論を重ね、地域の平和と安定につなげることだった。戦後70年の節目に再開できたこと自体を成果とし、関係改善の動きを確かなものにしていくべきだ。
 3カ国の国内総生産(GDP)の合計は世界の約2割を占める。投資や貿易などを通じた互いの結び付きは強く、観光などでも交流が活発化している。経済面で切り離すことのできない互恵的な関係にあることは明らかだ。
 会談では日中韓自由貿易協定(FTA)交渉の加速へ努力することでも一致した。中韓2国間ではFTAが既に合意されている一方、環太平洋連携協定(TPP)に中韓は参加していない。中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)も絡み、協議の行方は不透明だが、対話を重ねて一致点を見いだしてもらいたい。
 安倍首相と朴大統領の日韓首脳会談も初めて行われた。最大の懸案である「従軍慰安婦問題」では、できるだけ早期の決着を目指し、外務省局長級による交渉を加速させることで一致した。
 「慰安婦問題」は、国家による責任の明確化と補償をめぐって双方の隔たりは大きく、今後の政治的努力に解決は委ねられる。安倍首相はその言動からこれまで中韓両国の警戒や反発を招いてきた。首相は13年末以降は靖国神社参拝を控えているが、今後も「歴史を直視」する真摯(しんし)な姿勢が問題解決の出発点となる。
 3カ国会談では北朝鮮に非核化に向けた行動を促すことなどでも合意した。環境問題やエネルギー、防災など協力すべき課題は山積している。粘り強く対話を重ね、信頼醸成を図らなければならない。