<社説>認知症の初期支援 専門医の養成急ぎたい


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 認知症の人を早期に診断し、適切な治療や介護サービスにつなげる「認知症初期集中支援チーム」の設置が全国的に遅れている。

 政府は2018年4月までに全市区町村に支援チームを設置する方針だが、15年度中に設置を予定するのは全国で17・6%にとどまっている。県内では浦添、宮古島、渡嘉敷の3市村で、7・3%と全国を大幅に下回る状況にある。
 ただこれは市区町村だけで解決できる問題ではない。設置が遅れている背景には、支援チームで指導的な役割を担う専門医の不足がある。
 専門医の要件となる認知症サポート医の養成研修の実施主体は都道府県と指定都市である。認知症の人や家族への対応は喫緊の課題であり、専門医養成の取り組みを急ぎたい。
 17年度末までに認知症サポート医を5千人とする目標に対し、14年度までに研修を受けたのは3895人である。都市部に限られている研修を地方でも積極的に開催する必要がある。
 認知症は早期治療によって症状の進行を抑えられることもあるとの指摘がある。だが認知症の人は物忘れなどの症状が現れても、周囲の偏見を恐れたり、将来への不安を抱いたりして病院に行くまで時間がかかることが多いという。
 認知症の人と家族の会(京都市)が13年9月に実施したアンケートによると、家族が認知症を疑ってから本人が医療機関を受診するまでの期間は平均9カ月半だった。その間の本人や家族の不安や負担感は想像に難くない。
 支援チームは専門医の指導の下、保健師や看護師、介護福祉士ら医療と介護の専門職で構成される。認知症が疑われる人の自宅を訪問した結果を基に、医療機関での診断や介護サービス利用につなげる。18年4月を待たずに、支援チームをできるだけ早く設置して包括的な支援体制をつくりたい。
 厚生労働省によると、12年に462万人だった認知症高齢者は25年には675万~730万人に増え、65歳以上の約5人に1人に上ると推計されている。
 支援チームはあくまでも、初期段階の支援が役割である。正しい理解を普及するための学校での認知症教育の推進や地域ぐるみの見守りの充実など幅広い支援で、認知症になっても安心して暮らせる社会を構築したい。