<社説>中台首脳会談へ 地域安定へ実りある対話を


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 66年の時を経て、中国、台湾の両首脳が分断後初めて会談することが決まった。7日にシンガポールで行われる習近平・中国国家主席と馬英九・台湾総統の首脳会談は、台湾海峡の現状維持などが目的とされる。歴史的対話により、一時は冷え込んだ中台関係が再び融和に向かうことを期待したい。

 1949年に中国共産党による中華人民共和国が成立して以来「一つの中国」を掲げる中国政府は一貫して台湾国民党政府を認めてこなかった。
 95年には、独立志向があった李登輝総統の訪米に合わせ、中国が台湾近海にミサイルを撃ち込むなどの軍事演習を激化した。さらに初の直接投票で李氏が勝利した96年の総統選直前にも演習を激化させ、米軍は台湾周辺海域に空母を派遣するなど緊張感が高まった。いわゆる「台湾海峡危機」だ。
 李総統が提起した「二国論」や対中強硬路線を掲げて2000年に政権に就いた民進党の陳水扁総統の「一国一辺」(中台はそれぞれの国)発言があり、90年代半ばから21世紀最初の数年間は中台にとって冬の時代が続いた。
 転機は08年の政権交代で再び国民党の馬政権が発足したことだ。中台対話が再開し、10年には中台の経済協力枠組み協定(ECFA)が調印された。
 ことしに入ってからも2月に初の閣僚級会談、5月に習氏と朱立倫・台湾国民党主席の党トップ会談が実現。国共両党が「一つの中国」を認めた「1992年合意」を堅持し、交流拡大を確認した。
 歴史的会談の背景には、16年1月に実施される台湾総統選で、再び民進党が政権奪取する可能性が高まったことがあるとされる。融和や経済交流促進を演出することで「92年合意」を認めない民進党をけん制するというものだ。
 選挙を軸に双方の利害が一致した結果だが、隣国の政治情勢が影響する沖縄にとっては、対話自体は評価したい。96年の台湾海峡危機では、与那国島近海にもミサイルが放たれた。無益な緊張を緩和するためにも、両首脳には、外交による平和的解決へ道筋をつけてほしい。
 ことし9月に台湾紙が実施した世論調査では「永久に現状維持でよい」と答えた人が過去最高の55%に達したという。統一を望むのは13%だった。住民意思を踏まえた新たな中台交流の在り方が提示されることも期待したい。