<社説>いじめ自殺 学校任せにせず連携密に


この記事を書いた人 Avatar photo 宮城 菜那

 またしても尊い命が失われた。「学校でいじめを受けた」と遺書を残し名古屋市内の地下鉄駅で市立中学1年の男子生徒(12)が自殺した。

 自殺した男子生徒へのいじめを生徒20人が直接見ていた。本人から相談を受けた生徒も3人いた。男子生徒は10月中旬、同じ卓球部の同級生に「もう駄目かもしれない」と話していたという。しかし、学校はいじめの実態を把握できず、家族も直前まで異変に気付かなかったという。
 なぜいじめに気付かなかったのか。専門家による実態解明と再発防止策を急いでほしい。大津市の中学生自殺をきっかけにいじめ防止対策推進法が施行されたが、それ以降もいじめによる自殺は後を絶たない。法律が主眼としている早期発見と周囲の連携した対応はできているのか、この際、総点検すべきだ。
 文部科学省の2014年度のいじめ調査結果によると、全国の小中高校などで把握したいじめ件数は18万8057件だった。いじめ防止対策推進法で「重大事態」と規定され、心身への重大な被害が生じた疑いのあるいじめは、13年度より271件増の450件だった。
 担務が多く学力向上対策など多忙な教師の実情が、子どもの「SOS」を気付きにくくし、情報を抱え込んでしまう側面もあるだろう。教師一人一人がゆとりを持って児童生徒と向き合う環境を整える必要がある。
 ところが、財務省は公立小中学校の教職員定数を24年度までに約3万7千人削減するよう求めている。いじめや不登校などの課題に応じて政策的に配分される「加配定数」も例外扱いしない方針だ。教育環境の悪化をもたらす合理化では、いじめへの把握をいっそう困難にするだけだろう。
 中教審の部会は、スクールカウンセラーなどの専門スタッフを正規の学校職員に位置付け、教員がこうした専門スタッフと連携して、いじめなどの課題に対応すべきだとする答申素案を示した。子どもの相談だけでなく関係がこじれた親と教師の橋渡し役としても期待できる。不安定な非常勤から常勤化を急ぐべきだ。
 家庭は学校任せにしていないだろうか。日常の会話やしぐさから子どもたちに異変が起きていないか見守ってほしい。孤立無援のまま追い詰められないよう関係機関と連携を密にしたい。