<社説>税金無駄使い 最小限支出で最大の効果を


この記事を書いた人 Avatar photo 宮城 菜那

 会計検査院がまとめた2014年度の検査結果報告で、官庁や政府出資法人が約1568億円(570件)の税金を無駄に使っていたことが判明した。厳しい財政状況の中、不適切な予算が執行されていた現状にあきれるほかない。

 多額の税金を投じたにもかかわらず、事業の成果を上げられない不備が見つかっている。生活習慣病を予防する特定健診(メタボ健診)の効果を調べる厚生労働省の総事業費27億円の事業で、構築したデータベースに不備があり、11~12年度の健診データ計約4800万件のうち、2割余りしか検証作業に使えなかった。
 なぜこうした事態になったのか。医療機関で入力する個人識別の英数字のID情報が全角だったり半角だったりと、形式が統一されていなかったのが原因だ。こうした入力の不備で8割近くのデータが検証できない。あまりにもお粗末ではないか。
 九州電力川内原発周辺に約6900万円かけて設置された放射線監視装置は太陽光発電量の少なさで必要電力が確保できず、追加設置の25カ所全てで連続的な測定ができていなかった。監視装置は24時間連続で放射線の公衆への影響を監視するのが目的だ。中には1カ月の約3割が測定できていなかった。これでは設置した意味がない。
 県内でも不適切な経理処理7件が法令違反に当たる「不当事項」と指摘された。南風原町が沖縄振興交付金(一括交付金)の沖縄振興公共投資交付金で実施した町道拡幅工事で1221万6千円が積算過大で不当と指摘された。建物移転の補償費算定が適切でなかったためだ。なぜ移転補償費を過大に支払っていたのか。原因を詳細に調べ、住民に説明すべきだ。
 無駄使いの一方で、必要な支出に十分な税金が投じられていない事例もあった。20府県の公立小中学校3千校余りで、消防設備に劣化などの問題が見つかっているのに適切に修繕などが行われていなかった。東京・羽田空港など全国の9空港で滑走路や誘導路の維持管理が不十分だった。安全、安心に関わる分野は最優先で税金を投じるべきだ。
 国の借金は今年6月末時点で1057兆2235億円となり、過去最大を更新した。無駄使いなどしている場合ではない。最小限の支出で最大の効果を生むための不断の努力が必要だ。