<社説>夫婦別姓と再婚 時代遅れの不合理改めよ


この記事を書いた人 Avatar photo 宮城 菜那

 日本の夫婦同姓制度や女性だけに義務付けた再婚禁止規定は、国際社会から女性の権利を侵しているという批判にさらされている。

 時代にそぐわない制度なら速やかに法律を改正すべきだ。男女平等が進み、人生の選択肢を広げることにつながるだろう。
 夫婦別姓を認めず、女性の再婚禁止期間を定めた民法の規定が男女平等を定めた憲法に違反するかが問われている二つの訴訟の上告審で、最高裁大法廷が弁論を開いた。
 民法は夫婦が結婚時に「夫か妻かどちらかの姓を名乗る」と定め、再婚については女性だけに離婚から6カ月間経過しないと認められないと規定している。いずれも100年以上前の明治時代から一度も改正されずに維持されてきた。
 女性の社会進出が進んだ上、家族の在り方や結婚・人生観は多様性を増している。
 上告審で弁論が開かれたことで、大法廷が新たな憲法判断を示すか、高裁の違憲判断を変更する公算が大きくなった。最高裁は年内にも初の憲法判断を示すとみられる。時代に合わない制度は速やかに改めるべきだ。
 夫婦が「夫または妻の姓を称する」という規定をめぐり、国は「いずれかが優越する取り扱いを定めてはいない」と反論した。だが、厚生労働省の調査によると、2013年に結婚した夫婦の96%が夫の姓を名乗っている。圧倒的な夫優先の状況が続く。
 夫婦別姓が導入されないため、自らの姓を名乗ることを諦めた女性も多いはずである。
 結婚後も職場で旧姓を使いやすい環境が整いつつあるものの、結婚で姓を変えると不都合は多い。健康保険証やパスポートは旧姓が使えない。姓をめぐるわだかまりから別離する例もある。
 原告側が求める選択的夫婦別姓制度は希望する人に認めるもので、合理的な主張ではないか。
 一方の再婚禁止規定は父親の特定をめぐる紛争を防ぐのが法の目的だが、DNA鑑定技術が発達して特定が可能になっている。女性だけ禁止を義務付けるのは時代遅れではないか。
 そもそも法制審議会は選択的夫婦別姓導入や再婚禁止期間を100日間に縮める改正案を1996年に答申していた。保守系議員らが「伝統的家族観が崩れる」と反対し、法案提出は宙に浮いた。行政府と国会の怠慢も問われている。