<社説>モンデール氏証言 米は辺野古見直し唱えよ


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 米海兵隊の撤退や大幅削減の芽を、日本政府が摘んできたことがあらためて浮かび上がった。

 1993~96年に駐日米大使を務めたウォルター・モンデール氏が本紙インタビューに応じた。96年4月に橋本龍太郎首相との共同記者会見で普天間飛行場の返還合意を表明した人物だが、インタビューで移設先の選定を振り返り「われわれは沖縄だとは言っていない」と語った。
 同氏は「沖縄も候補の一つ」と述べた上で「基地をどこに配置するかを決めるのは日本政府でなければならない」と付け加えた。
 返還合意の際に付した県内移設の条件は日本側の要望に沿ったものであることを示唆した証言だ。同氏が2004年に米国務省外郭団体のインタビューで語った内容と照合すると、さらにはっきりする。
 95年の米兵による少女乱暴事件に関し、こう述懐している。「(事件から)数日のうちに米軍は沖縄から撤退すべきか、最低でも駐留を大幅に減らすかといった議論に発展した」が、「彼ら(日本側)はわれわれが沖縄を追い出されることを望んでいなかった」
 日本政府の意向で県外・国外移設の大きな機会を逸したといっても過言ではない。沖縄の犠牲を黙認するどころか、負担が劇的に軽減する機運を水面下でかき消していたとなれば、国民への背信にほかならない。犯罪的でさえある。
 海兵隊は米統治下にあった50~60年代、本土での反対運動を背景に沖縄に移転してきた。復帰直後の70年代前半には、米政府内で在沖海兵隊の撤退や大幅削減が検討されながら日本政府がこれに反対したことも分かっている。
 軍事的必然性ではなく、政治的理由から沖縄に負担が強いられていく構図は、辺野古の新基地建設問題につながる。モンデール氏は「日本政府が別の場所に決めれば米政府は受け入れるだろう」との見解を示した。安倍政権が移設作業を強行する非民主的な姿勢を改めることがまずは必要だ。
 ただ米国も当事者であることを忘れてはならない。合意から19年も返還が実現していないのは、移設計画の混迷を見ながら「日本の国内問題」として距離を置いてきた米側の責任も大きい。民意に反した基地建設やそれに基づく安全保障の在り方に対し、日本に再考を促すことこそが世界のリーダーを自任する超大国の最低限の義務であるはずだ。