<社説>スー・チー氏勝利へ 国際社会は民主化後押しを


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 ミャンマー総選挙はアウン・サン・スー・チー氏率いる野党、国民民主連盟(NLD)が圧勝する公算が大きくなっている。ミャンマーが民主化へ踏みだそうとしていることを歓迎したい。

 ミャンマーは1962年から軍事政権が続いた。2011年に民政移管したとはいえ、現政権も大統領をはじめ中枢は元軍人が占めており、真の民主化とは認められない。政権交代によって、この国が民主主義国家へ前進することを望みたい。
 ミャンマーが動きだした立役者は、独裁政権に抗議の声を上げてきた国民であり、14年以上にわたって拘束・軟禁下に置かれながらも信念を貫き通し、非暴力で民主化を訴えたスー・チー氏である。
 加えて国際社会の関わりも見逃せない。欧米諸国はミャンマーに経済制裁を課す一方で、関係を断つことなく、軍政側に人権状況の改善を粘り強く求めてきた。今回の民主化への流れは、国際社会の関与政策の成果でもある。
 北朝鮮に対しても国際社会が腰を据えて関与し、展望を切り開いていく姿勢が求められよう。
 日本は88年のクーデターで誕生した軍事政権を、スー・チー氏が自宅軟禁された89年に承認した。軍政と民主化勢力の対話を促す一方で、日本は長期にわたり多額の援助をつぎ込んだ。結果として軍政存続に利した感は否めない。
 軍系の与党や政権は国民の選択に従う考えを示している。だが90年の総選挙でNDLが約8割の議席を獲得したのを当時の軍政は無視し、政権に居座った例もある。国際社会は注視する必要がある。
 政権交代が行われても解決すべき課題は多い。上下両院定数の4分の1を軍人に割り当てる制度を廃止しなければ、軍部の影響力は残る。少数民族武装勢力との和平も実現せねばならない。国民として認めていないイスラム教徒少数民族ロヒンギャと多数派の仏教徒との融和も図る必要がある。
 いずれも民主化実現の障害になりかねない。国際社会も解決に向け、協力して取り組むことを求めたい。
 ミャンマーには豊かな資源と労働力があり、「アジア最後のフロンティア」として注目されている。国際社会はミャンマーの国民に民主化の恩恵を享受してもらうとの視点で関係を構築すべきだ。自国の利益を過度に重視することがあってはならない。