<社説>MRJ初飛行 県経済の発展につなげよう


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 約半世紀ぶりの国産旅客機の初飛行を喜びたい。就航後の重整備は那覇空港で実施する予定だ。技術面で新型機の運航を支えることが、県経済の飛躍にもつながる。

 国産初のジェット旅客機MRJ(三菱リージョナルジェット)が名古屋空港で初飛行に成功した。国産旅客機の開発は1962年に初飛行したYS11以来である。開発開始から10年余を経て、国産旅客機構想は大きな節目を迎えた。初飛行にこぎ着けた関係者に称賛を送りたい。
 これからは時間との勝負だ。受注件数は既に400件を超えている。初納入は1年半後に迫った。安全性、信頼性の確保を第一に、試験飛行を重ねながら安定的な製造と供給を望みたい。
 「リージョナル(地方)」という名称からも分かるように、MRJは地方路線での運航を想定している。YS11が沖縄を含む国内の地方・離島路線を支えた時代があった。MRJも地域、離島住民を支える生活路線での活躍が期待されている。開発の意義は大きい。
 それにも増してMRJが注目されているのは産業としての裾野の広さがあるからだ。最先端技術を蓄積していくため、日本の製造業全体の発展につながる。1機の部品数は100万点に上る。部品メーカーへの波及効果は大きい。
 経済効果は沖縄にも広がっている。MRJ導入を計画するANAは「定期的な重整備は全て那覇空港で実施していきたい」と明言している。那覇空港で航空機整備事業を担う「MROジャパン」が6月に設立されており、MRJ受け入れの準備は進んでいる。
 翁長雄志知事が経済政策の柱に据える「県アジア経済戦略構想」は、MRJ整備を含む航空関連産業クラスター(集積)の形成をうたっている。航空機整備事業は県経済を活性化させる重要な政策だ。
 航空機整備場は県内技術者の活躍の場にもなる。国立沖縄高等専門学校は本年度から「航空技術者プログラム」を開設した。実業高校や専門学校で育った若い技術者の目標となる。人材流出の歯止めにもなろう。
 沖縄の地理的優位性を生かせば、各国の航空各社の需要に対応するアジア有数の航空機整備の重要拠点へ発展を遂げる可能性もある。
 アジアの経済成長を取り込むことが県経済の発展を左右する。その土台づくりの一翼をMRJ整備で担いたい。