<社説>省庁事業の点検 予算へ確実に反映すべきだ


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 中央省庁の事業に無駄がないかを有識者が点検する「秋のレビュー」が終了した。使用実績がほとんどない核燃料運搬船関連予算などの無駄をあぶり出したことは一定の成果といえよう。

 だが、レビュー結果に法的拘束力はない。2016年度予算編成にどこまで反映できるかは不透明である。結果がしっかり反映されねば、レビューを実施する意味は薄らぐ。
 点検に終わらせてはならない。点検結果の実施が必要だ。そのためには事業ごとの存廃や適切な予算額などに疑義を持たれないように判定し、予算へ確実に反映する仕組みを確立すべきだ。
 レビューは第2次安倍政権発足後3回目である。財務省は過去のレビューで対象となった事業について、14年度予算案では概算要求段階から約4800億円、15年度は約1千億円を削減できたとする。
 無駄を全て削減できたとは到底認められない。会計検査院の14年度決算検査報告は約1568億円(570件)の税金が無駄に使われていたと指摘している。
 今回の点検対象は8府省の55事業で、16年度概算要求額は計13兆6千億円である。予算が有効に使われれば、国民も理解するが、無駄遣いはいまだにある。
 高速増殖炉もんじゅ(福井県)を運営する日本原子力研究開発機構が、06年に建造した核燃料運搬船「開栄丸」は4回使用しただけである。10年度以降は使われていないが、文部科学省は維持費として各年度に約12億円を支出している。
 適切な税金の運用には程遠い。加えて国民は脱原発を求めている。維持費は当然、削除すべきである。
 民主党政権時代の事業仕分けでは「廃止」「予算縮減」「抜本的見直し」などと判定されても、各省庁は抵抗した。名称変更で事業の存続を図る「看板掛け替え」や別事業と統合して残す「付け替え」などが目立った。
 国民はそんな各省庁の姿勢に厳しい視線を注いでいることを忘れてはならない。
 「国の借金」はことし6月末時点で1057兆2235億円となり、過去最大を更新した。日本の厳しい財政状況は深刻さを増しているのである。
 省庁自身が予算をより厳しく点検するのが本来の在り方だ。それができないならば、レビュー結果を尊重することが最低限の務めである。