<社説>ネット中傷 真の被害者救済制度を

 インターネット社会の「負の側面」が現れた事件だ。被害者の名誉回復策を考え、社会のルールづくりを急がなければならない。

 県内を拠点に歌手として活動する女性を誹謗(ひぼう)中傷する内容をネット掲示板に書き込んだとして、浦添署が10月末、侮辱容疑で40代の男を那覇地検に書類送検した。
 しかし、書き込みの削除は違法と認められた部分しかできず、第三者の分を含め大半がネット上に残ったままになっているという。
 たとえすぐに削除された場合でも転載されたり、同様の内容が別の題名で投稿されたりするなど、ネット上から完全に消すのは困難だ。今後も被害者やその家族らに精神的な苦痛を与え続けかねない。
 今のネット社会では誰でも被害者になり得る。泣き寝入りしている人も多いはずだ。こうした現状を放置しておくわけにはいかない。
 近年、欧州を中心に「忘れられる権利」「削除請求権」として、ネット上の個人情報削除を求める機運が高まっている。
 一方、日本では「忘れられる権利」はまだ明確には認められていない。情報を消したい場合、書き込んだ本人やサイトの管理者に直接、「プライバシーの侵害」として削除を求めるのが一般的だ。
 2002年施行のプロバイダー責任制限法で権利侵害情報の削除、発信者情報の開示が定められたものの、解決できないことも多い。会員制交流サイト(SNS)による情報発信手段の多様化やスマートフォン普及で、ネットをめぐるトラブルは増加、複雑化している。訴訟に発展すれば被害者の負担は大きい。制度の改善は急務だ。
 真の被害者救済を目指すため、日本でも「忘れられる権利」「削除請求権」の在り方を議論する時期に来ている。全国的な実態調査を進め、被害者救済の社会システムの在り方を検討すべきだ。第三者機関で申し立てを受け、判断する仕組みを検討してもいい。
 ただ誰もが自由に情報を調べられる検索サイトは社会全体に浸透しており、むやみに検索結果の削除を認めれば知る権利を侵害する可能性もある。政治家の過去の不祥事に関することなど、公益性の高い情報まで削除されかねないとの懸念もある。
 個人情報保護と、表現の自由や知る権利とのバランスに配慮しながら「忘れられる権利」「削除請求権」の議論を深めていくべきだ。



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