<社説>苛烈な辺野古警備 市民の命危険にさらすな


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 「国家権力が牙をむく」と形容するしかない事態である。

 名護市辺野古への新基地建設をめぐり、キャンプ・シュワブのゲート前や大浦湾の埋め立て予定海域で、抗議する市民の側にけが人が相次いでいる。
 まず、確認しておこう。
 今、全国で市民の非暴力の抵抗に対し、警察や海上保安庁の警備要員が連日投入されている現場は名護市辺野古と周辺海域しかない。新基地建設にあらがう市民社会の行動を、屈強な体力と装備を備えた要員が押さえ込み、危険にさらしている。
 沖縄の民意を一顧だにせず、10月29日に本体工事に着手した安倍政権の強硬姿勢が第1の要因だ。
 「弾圧」という言葉を用いても言い過ぎではあるまい。このままでは命に関わる重大事態が生じかねない。県警と海上保安庁は人権を侵害する行き過ぎた警備を即刻改め、現場から撤収すべきだ。
 4日に「鬼」「疾風」などのたけだけしい異名を冠された警視庁機動隊の精鋭部隊が投入されて以来、力ずくで市民の身体の自由を奪う警備が苛烈になっている。警視庁に触発されたのか、海保の海上での警備も乱暴さを増している。
 「海保拘束後に嘔吐(おうと)」「市民、骨折の可能性 機動隊に押され」「海保首絞め男性重傷」。19~21日の本紙朝刊の見出しを並べると、3日連続で身体的被害が生じる事案が起き、状況は悪化している。
 18日の大浦湾で、海上保安官に4人がかりで押さえ付けられた抗議船長の意識がもうろうとなり、搬送中の救急車内で嘔吐した。19日には作業車両前に立ちはだかった男性が機動隊員に押され、肋骨(ろっこつ)骨折の疑いがあるけがを負った。
 大浦湾の海上でカヌーに乗って抗議していた男性を拘束した海上保安官に首を絞められ、頸椎(けいつい)捻挫のけがを負ったのは20日だ。複数の目撃者によると、首を絞めたとされる保安官は18日に抗議船長を拘束したメンバーの一人だ。冷静さを欠き、感情を荒立てて市民にぶつかる要員を統率できていないのではないか。
 ゲート前に結集し、海上に出る市民は、主権者として理不尽な基地押し付けにあらがっている。選挙で示された民意を踏まえ、民主主義を体現する行動には正当性がある。それを組み敷く過剰警備が続けば、新基地にあらがう沖縄の民意は一層高まり、不屈の意思が強まることを安倍政権は自覚すべきだ。