<社説>米掃海艦石垣寄港 民間港の軍事利用やめよ


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 米艦船が訓練の一環で民間港を使用した。島の物流拠点である港の軍事利用は許されない。

 米軍の掃海艦パイオニアが7日午前、石垣港に入港した。石垣港への米掃海艦入港は2009年4月以来である。県が外務省を通じて寄港の自粛を求めたにもかかわらず、寄港を強行したのだ。
 寄港目的は当初、「休養や物資の補給」とされていた。ところがパイオニアのチェイス・ハーディング艦長は寄港後の会見で「石垣に来るのは通常訓練の一部」と明言した。さらに、「第7艦隊としてインド太平洋地域を活動範囲としていて、できるだけ多くの場所に寄港できるようにしておく」とも語った。「台湾有事」を想定したものであろう。
 艦長は今回の寄港は「休養・補給」ではなく訓練の一環であることを初めて認めた。さらに、石垣港への寄港は民間港利用の「実績づくり」であることも明らかになった。今回の石垣港使用が「通常訓練の一環」であることを政府は港湾管理者の石垣市や県に伝えていたのか、明確に説明しなければならない。
 訓練を目的とした南西諸島の民間空港・港湾施設使用の拡大は日米両政府の既定方針である。昨年12月に政府が閣議決定した安保関連3文書は、平素の訓練を含め民間空港・港湾を自衛隊が柔軟に使用する方針を打ち出している。今年1月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)はその方針を日米双方にまで拡大することを確認した。沖縄の頭越しの決定である。
 米軍は同月、訓練を目的とした下地島空港の使用申請を空港管理者である県に提出した。10月に実施される米海兵隊との合同実動訓練では陸上自衛隊のオスプレイの飛来が予定されている。米軍のパトリオットミサイル(PAC3)は一時、石垣港に展開した。今回のパイオニア寄港もこの流れの一つと言えよう。
 許しがたいのは米軍が船舶代理店を介し、石垣港にバリケードを設置したことである。「摩擦を避けるため」というのが理由である。石垣市が容認したとはいえ、米軍の意向によって市民を港湾施設から排除するようなバリケードの設置は異様だ。
 今回、掃海艦の艦長が訓練のための寄港を認めたことは、沖縄の民間港湾・空港の運用にも直結する。これまで米艦船の県内港湾の利用は基本的に「休養・補給」を目的としてきた。しかし、これからは日米両政府の方針に沿い、訓練を名目に堂々と沖縄の港や空港を使用する可能性があるのだ。まさに民間施設の軍事拠点化である。
 これは港湾や空港を管理する自治体や県の権限を侵すものだ。危険物を積んだまま民間施設を使用する可能性もあるのだ。このような動きを容認してはならない。ただちに異議申し立ての声を上げなければならない。