<社説>衆院「違憲状態」 怠慢を自覚し改革を急げ


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 「1票の格差」の抜本是正を迫るには甘い判決だ。しかし、国会は安穏としてはいけない。怠慢を自覚し、制度改革を急ぐべきだ。

 「1票の格差」が最大2・13倍だった昨年12月の衆院選は法の下の平等に反して違憲だとして、弁護士らが選挙無効を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁は「違憲状態」の判断を示した。
 選挙無効の請求は退けた。国会が是正に向けて取り組んでいることを考慮したためだ。しかし、これでは不平等状態の是正を求める国民の訴えにかなうような判決とは言えない。
 最高裁は2009年と12年の衆院選も「違憲状態」と判断した。各都道府県に1議席を割り振る「1人別枠方式」を格差の元凶と指摘し、是正を迫ったのである。
 それにもかかわらず、国会は抜本改革を先送りにし、格差を残したまま選挙を重ねた。司法は国会の怠慢を厳しく断ずるべきだというのが、投票価値の平等を求める国民の率直な声だ。
 事実、今回の判決では「無効としない判決をただ繰り返すことはできない」(木内道祥判事)、「憲法尊重義務の不履行や、違憲立法審査権の軽視も著しい」(大橋正春判事)という厳しい反対意見があった。いずれも選挙無効に踏み込んだ点は重く受け止めなければならない。
 今回を含む3度の「違憲状態」判決は、投票価値の平等が確保されないという現行制度の欠陥を指摘した。格差是正に向けた制度改革を早急に進めよという司法の要求に国会は従うべきだ。それを無視し続けることは、法治国家として到底許されない。
 今回の判決を受け、与野党は格差是正や議員定数の削減を求めた。それを掛け声だけに終わらせてはならない。制度改革に向けた具体的な行動を国民に示すべきだ。
 衆院選挙制度改革を検討する有識者調査会は年明けにも衆議院に答申を提出する。「1人別枠方式」を廃止し、都道府県人口比をより反映できる「アダムズ方式」を軸に議席配分の見直しを盛り込む見込みだ。
 「1票の格差」を放置したまま次期衆院選を実施してはならない。制度改革に向けて、各党は早急に議論を進め、結果を出してほしい。
 これ以上、憲法違反の状態を放置するのは異常だ。国権の最高機関の信頼性が根本から問われていることを忘れてはならない。