<社説>COP21開幕へ 次世代に付けを回すな


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 地球温暖化対策の新たな枠組みの合意を目指し、30日から約2週間、パリで国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)が開かれる。30日には安倍晋三首相ら約150カ国の首脳が出席を予定している。

 世界の平均気温上昇は続いている。温室効果ガス排出対策を急がなければ今世紀末の気温は産業革命前に比べ4~5度上がり、異常気象や食料不足など世界規模で重大な被害が出る恐れがある。深刻な事態だ。
 1997年に採択された京都議定書は、先進国に温室効果ガスの排出削減義務を課した。しかし、排出量の多い米国が離脱し、中国、インドが削減義務を持たないなど実効性に問題があった。
 温室効果ガスを各国内に封じ込めることはできない。先進国だけでは解決は無理だ。全ての国が協力する仕組みをつくることがパリ会議の責務だ。
 今何もしなければ、将来のコストはより大きくなる。次世代に付けを回してはならない。
 新たな枠組みの目標は、全ての国が削減に参加し、気温の上昇を深刻な悪影響が出始めるとされる2度未満に抑える世界の実現だ。2020年スタートを目指す。
 既に160カ国以上が自国の温室ガス削減目標を国連に提出したことは評価できる。ただ気温上昇幅を2度未満に抑えるには不十分といわれる。また、厳しい削減が義務付けられると参加しない国が出てくる懸念もある。
 合意には各国の削減目標を相互評価し、より高い目標に引き上げることや、行動を常に向上させるための仕組みづくりを盛り込む必要があろう。また、世界のエネルギーシステムを完全に脱炭素化するための道筋についても議論を深めていくことが必要だろう。
 日本は、温室効果ガス排出を30年度に13年度比26%削減するとの目標を設定している。実現に向けて、再生可能エネルギーの大幅導入や省エネ、企業や家庭などでの大幅削減が必要だ。だが国内で温室効果ガスをどう減らすのか、長期的なビジョンと政策が欠如している。
 日本は海外から大量の鉱物資源や木材などを輸入している。自らの経済活動や消費が、他国の環境に大きな影響を与えていることへの認識を深め、長期的な目標と政策を整備し、世界的な環境保全に貢献しなければならない