<社説>教育支出最下位 子供貧困と真剣に向き合え


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 経済協力開発機構(OECD)が公表した2012年の加盟各国の国内総生産(GDP)に占める学校など教育機関への公的支出の割合によると、日本は3・5%で比較可能な32カ国中、スロバキアと並んで最下位だった。

 前年まで5年連続最下位で、今回からは幼稚園などの就学前教育を除いているため単純比較はできないが、日本の公的支出は依然として低い水準のままだ。日本の将来を担う世代への十分な投資をせずして、先進国だと胸を張って言えるだろうか。
 平均的な所得の半分を下回る世帯で暮らす18歳未満の子どもの割合を示す「子どもの貧困率」は日本が12年時点で16・3%だった。前回の09年時点から0・6ポイント悪化し、過去最悪を更新した。OECD加盟34カ国の10年時点の平均は13・3%だ。日本は平均を上回っており、世界的にみても深刻な状況であることが分かる。
 こうした問題に対応するため、政府は昨年8月、貧しい家庭の子どもの教育や生活を支援するための「子供の貧困対策大綱」を初めて決定した。貧困率など25項目の統計を「指標」に設定し、改善に向けて取り組むとしているが、肝心な数値目標を盛り込まなかった。さらに当初は盛り込んでいた返済義務のない「給付型奨学金」の創設について、財源のめどが立たないとして見送っている。
 主要国では金融危機以降、経済悪化の教育へのしわ寄せを防ぐため、奨学金を貸与型から給付型に改める流れになっている。しかし日本には公的な給付型奨学金はほとんどない。
 安倍晋三首相は大綱を決定した閣議の前の会議で「全ての子どもが夢と希望を持って成長していける社会の実現を目指す」と述べている。教育への公的資金支出の拡大を実行に移さなければ、掛け声だけだと言われても仕方ない。
 貧困家庭の多くがひとり親世帯だ。県内のひとり親世帯は13年8月時点で3万4806世帯と過去最多を更新している。全世帯に占める割合も全国平均の2倍で最多だ。子どもの貧困で最も深刻なのは沖縄であることが分かる。
 日本が教育への公的支出の抑制を続ければ、最も影響を受けるのは沖縄だ。政府は大綱を「空手形」に終わらせることなく、子どもの貧困に正面から向き合い、実効性ある政策を打ち出す必要がある。