<社説>竹富町役場移転 丁寧な説明で合意形成を


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 竹富町役場新庁舎の建設場所について町民の意思を問う住民投票は「西表島・大原」への移転を求める声が55・2%を占めた。有権者の過半が西表島移転を望んだが、現庁舎のある「石垣市内」を希望した43・1%の町民の声も無視してはならない。

 住民投票条例は、町長と議会に投票結果を尊重するよう定めている。川満栄長町長は「民意に沿って役場建設を進めたい」と述べ、西表島への役場移転を明言した。その一方で「石垣市内での建設を求める声も真摯(しんし)に受け止め、西表島以外の住民のサービス低下にならないよう配慮しながら町づくりをしていく」とも述べた。
 町には町民に丁寧に説明し、合意形成を図ることがまず求められる。川満町長の言葉は、それに向けた決意表明と受け止めたい。
 50年余りにわたり議論されてきた役場移転問題は、住民投票で全て解決したわけではない。九つの有人島を抱える町には、役場移転に伴い、解決しなければならない課題が山積している。
 中でも各島から西表島までの定期航路開設は不可欠だ。竹富町の島々は役場のある石垣市と定期船で結ばれ、便数も多い。
 一方で、西表島と各島を結ぶ定期船はなく、新たに定期航路を開設しなければ、行政サービスが受けられない事態が生じることが危惧される。各島民の利便性を確保するには、ある程度の便数が必要だ。
 町民はこれまで石垣市にある総合病院や量販店、金融機関などを利用するついでに役場にも行けたが、町民の多くは役場が移転すればそれもできない。町民の交通費がかさむことが考えられ、役場へ行く町民への割引制度の充実も求められよう。その財源をどうするかの検討も必要だ。
 町長は2017年度中には新庁舎建設に着手する計画を示している。「日程ありき」ではなく、住民の多くが納得するまで粘り強く説明することが大切だ。
 町は役場移転で生じるさまざまな問題の解決策を提示し、町民の理解を深めることに全力を挙げてほしい。西表島以外の住民の不安を払拭(ふっしょく)し、町民の一体感を生み出すことは行政の役割である。
 住民の合意形成ができた時、新庁舎は竹富町の新たな町づくりの象徴になるはずだ。