<社説>化血研の不正 許し難い利益優先の姿勢


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  熊本市の一般財団法人「化学及(および)血清療法研究所」(化血研)が国の承認と異なる方法で血液製剤などを製造した問題で、厚生労働省が医薬品医療機器法(旧薬事法)に基づき、化血研へ立ち入り検査を行った。今後、業務改善命令などの行政処分を出すという。

 虚偽申請、隠蔽(いんぺい)工作など前代未聞の不正が次々と明るみに出ている。厚労省は常軌を逸した企業体質にメスを入れ、徹底した調査で不正の全容解明と再発防止に努めるべきだ。
 公表された第三者委員会の調査によると、化血研は血液製剤の早期の製品化や安定供給を最優先するため、血液が固まるのを防ぐ物質を添加するなど、31の工程で承認書と異なる方法で製造していた。一部は約40年前から行い、多くは1980年代から続けていた。
 承認と違う製法で作れば、人体に影響が出る可能性は少なからずあるはずだ。健康被害は確認されていないものの、悪質極まりない。患者を軽視し、企業の利益を優先させる姿勢は許し難い。
 また、国の定期査察の際には、承認通りの製法で作ったとする虚偽の記録を示し、発覚を免れていたという。
 製薬会社としての倫理観や企業ガバナンス(統治)が著しく欠如している。組織ぐるみの法令軽視は厳しく問われるべきだ。化血研には人の命に密接に関わる組織としての自覚を強く持ち、一から出直すしか、信頼回復の道はない。
 長年、不正を見抜けなかった国の責任も問いたい。血液製剤メーカーなどへの査察は、医薬品医療機器法に基づき、国が医薬品医療機器総合機構(PMDA)に委託し、2年に1度程度実施する。事前通告して企業側に必要な書類を用意させていたという。
 今回の不正発覚を受け、厚労省は査察を強化した上で、都道府県が実施している他の医薬品メーカーへの調査方法も見直しを検討するという。当然だ。第2、第3の不正があってはならない。
 抜き打ち査察を含め、不正を効果的にどう見つけるか、実効性のある仕組みを急いでつくる責任がある。
 日本の医療が世界でも信頼性が高いのは、医薬品類が徹底的に品質管理されているという大前提があるからだ。今回の不正発覚を機に、業界全体でより厳格な製品製造・管理体制を確立しなければ、日本全体の信頼さえ崩れかねない。