<社説>着陸帯容認せず 命と自然守る当然の結論だ


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 住民の命と安全、平穏な生活を守る上で当たり前の話だ。貴重な自然を守るという意味でも必然的な結論である。東村高江の米軍ヘリパッド建設問題をめぐり、翁長雄志知事は県議会で「今の状況からは分かりましたとは言えない」と述べ、現時点では容認できないとの考えを示した。

 知事就任後初めて明確に容認しない意思を示した形だ。翁長氏は昨年の知事選で高江ヘリパッドについて政策には明記しなかったものの、記者会見では「ヘリパッドは、オスプレイの配備撤回を求めている中で、連動して反対する」と述べている。だから容認しないのは当然のあるべき姿だ。
 普天間基地の県外移設を公約しておきながら辺野古新基地建設を容認し、「辺野古反対とは言っていなかった」と詭弁(きべん)を弄(ろう)して公約破りでないと強弁した前任者の轍(てつ)を踏んではならない。
 翁長氏は「何でも賛成か反対かとか、こんな問題というよりも沖縄県全体の中から判断していく」とも答弁したが、分かりにくい。今後は知事選時のように明確に反対を意思表示してもらいたい。
 高江ヘリパッド問題は、北部訓練場の過半の面積を返還する代わりに、高江集落を取り囲むように六つの着陸帯を新設するというものだ。防衛省は当初の計画を変更し、全てをいっぺんにではなく、既に完成した2カ所をことし、先行提供した。もう始まったのだから抵抗を諦めろ、と県民に無力感を植え付けるのが狙いだろう。
 しかしこの着陸帯は最も近い民家から400メートルしか離れていない。オスプレイは盛んに飛行し、しかもブロック片をつり下げて飛行する訓練すら繰り返している。危険なことおびただしい。
 既存着陸帯は年間使用回数が1288回だが、新設する6カ所では計2520回とほぼ倍増する計画である。騒音などの基地負担の激増は明白だ。
 この付近には世界有数の貴重な亜熱帯林が広がる。つい2年前にも台湾で新種と位置付けられたランや複数の絶滅危惧種の植物が見つかった。同じく絶滅危惧種であるヤンバルクイナやノグチゲラの唯一の生息地でもある。そんな自然豊かな森に、重い低周波音を響かせ、時に直下の草地に火災を発生させるオスプレイを飛ばすのだ。ヘリパッド建設など容認できるはずがない。