<社説>秘密法「憲法上問題」 不要な法、国民に問い直せ


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 またしても法の欠陥が明らかになった。1日に完全施行された特定秘密保護法のことだ。成立前の2013年、秘密指定を受けた書類が関係省庁から提供されない恐れがあり、国の支出入全てを検査すると定めた憲法上、問題があると会計検査院が指摘していた。

 国民の知らない間に、ある情報が秘密指定されれば、その必要性、支出の適正さに監視の目が及ばない。こうした事態が民主主義国家で通用するはずがない。秘密法は速やかに廃止するしかない。憲法違反である安全保障関連法と合わせ、二つの法の是非を争点として、政権はあらためて国民に信を問うべきだ。
 憲法90条は「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査」すると定める。一方で秘密保護法は、特定秘密を提供できるのは「我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めたとき」(10条1項)としている。秘密指定した情報を省庁が独自に「著しい支障」があると判断すれば、資料提供を拒む可能性がある。「何が秘密かすら秘密」という欠陥法の下、安全保障を隠れみのに目的や使途を不明にすることは許されない。
 検査院の求めで、内閣官房は検査上必要があれば行政機関は秘密事項でも提供する、との内容の通達を出すことで合意した。しかし、いまだに通達は出されていない。
 内閣官房は「憲法上の問題はないと認識している。通達は法施行後の運用を見つつ適切な時期に出す」と見解を示しているが、悠長な姿勢は許されない。
 それは特定秘密保護法と類似しているとして比較される、戦前の軍機保護法の運用を見れば明らかだ。防衛研究所紀要第14巻第1号(2011年12月)に掲載された論文によると、改正軍機保護法が制定された1937年からの3年間、同法で摘発されたのは377人だが、有罪となったのはわずか14人、3・7%だった。中でも39年は289人も摘発しながら有罪は4人にすぎなかった。適正さを欠く運用に、当時の憲兵司令部が「行き過ぎ」をとがめる通達を出したという。
 歴史に学べば、一度できた法律は、運用する官僚のさじ加減でいくらでも拡大解釈できる可能性がある。国民が知らない間に必要な情報ですら秘密とされ、闇に葬られる恐れがある。主権者の目が届かない悪法は、不要でしかない。