<社説>増える民泊 活用へルール作り急げ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 一般の家やマンションの空き部屋に観光客を有料で宿泊させる民泊が増加している。

 民泊は旅館業法の営業許可が必要だが近年、外国人旅行客の増加で宿泊施設が不足し、無許可営業が広がっている。宿泊者のごみ出しや騒音、不特定多数の外国人旅行者の出入りに関する苦情が周辺住民から出ている。
 政府は有識者会議を発足させ、来年3月にも一定の方向性を示す。「観光立国」を目指す以上、早期に実態を把握した上で、法令改正や管理体制の確保などルール作りを急ぐべきだ。
 観光庁によると、ことしの訪日外国人旅行者数は10月までに1631万人と急増している。
 民泊はホームステイ型とホテル型に大別される。沖縄の場合、修学旅行を対象としたホームステイ型の民泊が盛んだ。例えば伊江村はことし4月から来年3月まで292校、延べ6万4300人(日帰り民家体験、連泊を含む)を見込んでいるという。昨年度より約6900人増加となる。
 民泊を体験した生徒たちが大学生や社会人となり、再び島の「両親」を訪れるリピーター増につながる。島の暮らしに直接触れ合い、文化体験ができることは、ホテルでは味わえない魅力であり、沖縄観光の幅を広げることになる。
 今帰仁村観光協会は、村内で宿泊営業が認められている民家を民泊予約サイトに登録した。修学旅行生だけでなく、今後は国内外の個人客など新たな客層の利用も広げていく。民泊の普及拡大は地域の経済活性化にもつながるので歓迎したい。
 一方、現在問題になっているのは、アパートやマンションの空室などを集めて客を受け入れるホテル型の民泊だ。ホテルより安いため借り手にメリットがあり、空室を提供するため貸し手にもメリットがある。県内でも国内外からの観光客向けに、新たなビジネスが始まっている。
 良質なサービスを提供するなら歓迎だが、全国で無許可業者の拡大や近隣住民とのトラブル、治安、感染症対策などの課題が指摘されている。こうしたホテル型の民泊には一定の規制が必要だろう。
 京都市は民泊の実態調査や対策を検討するプロジェクトチームを発足させた。沖縄県も国の対策を待つのではなく、独自に民泊の在り方を検討すべきではないか。