<社説>飲酒運転急増 被害と加害例共有し撲滅を


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 師走を迎えた沖縄のあしき風物詩と済ますわけにはいかない。

 不名誉極まりなく、不特定多数の人たちの命を危険にさらす飲酒運転は絶対にしてはならない。
 12月に入り、県内で飲酒運転の逮捕者が急増している。4日から10日にかけての逮捕者が41人に上った。1週前の11月27日~12月3日までの15人からはね上がった。
 交通人身事故に占める飲酒絡みの事故の割合が、沖縄は25年連続で全国最悪となっている。忘年会シーズンを迎え、飲酒機会が増えたことと逮捕者が比例している。倫理観に乏しく、飲酒運転に手を染める人が一定の割合で存在する表れなのか。
 社会全体で歯止めをかける力が足りないことを示していよう。
 在沖米軍が深夜外出と基地外飲酒を制限する行動指針を緩和して1年がたったが、その前の1年と比べ、軍人・軍属らによる飲酒運転逮捕者が45%も増えている。規律を重んじる軍隊組織の中に明らかな綱紀の緩みがある。
 逮捕者急増は、飲酒運転による新たな犠牲者を生み出す警告と受け止めるべきだ。沖縄社会全体でその危険性をあらためて認識し、飲酒運転はしない、させない雰囲気を醸成してほしい。
 アルコールは確実に判断能力と運転能力を奪う。無関係の歩行者や車の運転手を巻き添えにし、死亡させたり、重大な傷害を負わせたりするケースが後を絶たない。
 先月18日にも那覇市内の繁華街の市道で、生徒の健全育成に尽くしていた中学校のPTA会長が飲酒運転の乗用車にはねられ、亡くなった。善良な市民の命が一瞬にして奪われ、家族や地域社会に深い悲しみをもたらした。今も現場で手を合わせる人の姿がある。
 飲酒運転をする人には「自分は大丈夫」という意識があるのだろう。しかし、それは紛れもなく重い犯罪である。酒を飲んでハンドルを握った瞬間、自分と車が凶器と化すことを自覚してもらいたい。飲酒運転の犠牲になった被害者への賠償金が億単位に上る例も出ている。
 飲酒重大事故の被害者と加害者が身近にいる人は、その危険性と罪の重さを目の当たりにしたことで飲酒運転への嫌悪感を強め、歯止め役になるケースが多いという。
 取り返しのつかない加害と被害の事例を共有することにも努め、飲酒運転を撲滅する機運を一層高めねばならない。