<社説>衆院選改革 歪みの放置は許されない


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 衆院選挙制度改革を検討する有識者調査会は、議員定数について小選挙区295から6減、比例代表180から4減の計10減とし、計465(現行475)議席とする答申をまとめることを決めた。

 答申案通りとなれば、東京や千葉など都市部の1都4県の小選挙区が7増える一方、沖縄を含む13県で小選挙区が1ずつ減る。都道府県間の1票の格差は1・788倍から1・621倍に縮小する。
 「1票の格差」是正について最高裁は11月、昨年の衆院選を「違憲状態」と判断している。今回の答申が実行されないまま次回衆院選を行えば、再び「違憲状態」と判断が下される可能性もある。格差是正を目指すという点で、答申案は一定の評価はできよう。
 1票の格差を2倍未満にすることは重要だ。ただ「格差は小さいほど良い」という観点だけでは、定数は地方からどんどん削られてしまう。これで民主主義が十分機能するとは言い難い。
 経費削減だけに目を向け定数減が進めば、地方の民意は切り捨てられ都市部向けの政策ばかりになり、「地方創生」に逆行するとの批判も強い。国会による政府監視機能が低下するとの指摘もある。
 沖縄が抱える米軍基地の問題など、国政に意見が反映されにくくなってしまう恐れさえある。地方の問題は国政と表裏一体だ。安保問題を例に挙げるまでもなく、地方から国政を考えることは重要だという視点を無視してはならない。
 現行制度に欠陥があるのは明らかだ。2009年衆院選で政権を獲得した民主党は、小選挙区で47%と過半数に満たない得票で74%の議席を得た。14年衆院選の小選挙区で自民党は、48%の得票で76%の議席を得た。
 小選挙区制度の歪(ゆが)みを放置したまま「1票の格差」を是正するのは不可能だ。
 改革論議は小選挙区制度の維持を前提とし、抜本改革を避けている。与野党ともに現行制度に固執することなく、民意をより反映し、選挙区割りをその都度、変更しなくても定数不均衡を是正できる選挙制度について、早急に協議を始めるべきだ。
 衆院と参院の役割や機能などを総合的に考慮し、地方の定数配分にも目配りし、地方の声を国政に反映するシステムの構築など構造的な問題に切り込みたい。抜本的な選挙制度改革に踏みだすべきだ。