<社説>中国土砂崩れ 人災防止へ責任明確化を


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 中国で不幸な事故が起きた。広東省深圳市で起きた土砂崩れ事故は、20日の発生以来、70人以上が行方不明とされ、23日朝にようやく1人が救出された。時間の経過とともに状況は厳しくなるが、1人でも多くの人が助かってほしい。

 「土砂崩れ」と呼んではいるが、実際には中国当局が認めたように積み上げた残土が崩落した人災だ。著しい経済成長を続けてきた中国では、開発一辺倒で環境や安全面で後手に回ってきた経緯がある。国土全体に共通する課題だ。中国政府は同じ過ちを繰り返さないよう、一刻も早く責任の所在を明確にすべきだ。
 深圳市は2011年のユニバーシアード夏季大会開催をきっかけに、06年ごろから会場や道路建設が活発になり、大量の残土が発生した。市内9カ所の残土置き場は満杯で、かつて採石場だった事故現場に残土が運ばれるようになった。同市の地下鉄工事で発生した残土だけでなく、周辺都市の建設廃棄物も持ち込まれ、残土の山は200メートル近くに達したとされる。
 報道によると、残土を捨てるには管理者に金を払う仕組みで、捨てれば捨てるほど管理者がもうかるようになっていたという。中国の警察当局は管理していた会社の幹部を拘束したが、危険な状態になるまで放置した地元政府の監視も妥当だったのか疑問が残る。
 中国は劇的な経済成長の陰で多くの負の要因を抱え込むようになった。北京をはじめとする首都周辺の大気汚染もそうだ。建設ラッシュのために出稼ぎに来た農村部の人々は、劣悪な労働環境のためにじん肺患者が増えたとされる。今回の事故で被害に遭った地域も工場や労働者の宿舎が多数あり、行方不明になった人は内陸部から出稼ぎに来た人とみられている。
 さらに中国全土で進む大規模不動産開発や高速道路建設のため、大量の残土処理は広東省に限らず全国的な課題とされている。
 中国企業や大学でつくる団体がまとめた建設廃棄物の再利用報告書(2014年版)によると、土砂などの再利用率は日本や欧州連合(EU)が90%以上なのに対し、中国は5%に満たないという。
 今回の事故は経済成長に目を向け、環境、安全への配慮が不足していた中国政府の問題でもある。これ以上、人災を繰り返さないためにも中国政府は早急に対策を打ち出すべきだ。