<社説>’15回顧 基地問題 強固な民意さらに広げたい


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 民意を踏みにじる安倍政権の強権姿勢がさらに際立った。その一方で、沖縄の民意を支持する声の広がりを実感する1年でもあった。

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴う新基地建設問題は、国と県が互いに裁判に訴える異例の事態となった。
 新基地建設反対の民意に向き合わず、代執行訴訟を提起してまで新基地を沖縄に押し付けることは、民主主義の否定にほかならない。国は自ら代執行訴訟を提起しながら、判決を待たずに海上作業を続けている。民意だけでなく、司法も軽視する姿勢は許し難い。
 翁長雄志知事が前知事の埋め立て承認を取り消したのに対し、訴える資格のない沖縄防衛局が行政不服審査法で不服を申し立て、石井啓一国土交通相が翁長知事の取り消し処分の効力を凍結する執行停止を決定した。
 不当な決定であり、工事が進めば環境が破壊され、県の自治権が侵害される。県が抗告訴訟に踏み切ったのも当然だ。
 防衛省は久辺3区(辺野古、久志、豊原)に直接補助金を交付できる制度を創設した。明らかな地方自治への介入である。新基地建設のためなら地方自治破壊もいとわない国のやり方は看過できない。
 第三者機関の形骸化もあらわになった。国地方係争処理委員会が国交相の執行停止決定に関する知事の審査申し出を門前払いしたとあっては、存在する意味はない。
 建設阻止の民意のうねりが広がったことは心強い。全国世論調査では国への批判的な意見が多数を占める。新基地建設断念を求めた国会議事堂の包囲行動には約2万2千人(主催者発表)が参加した。
 新基地阻止を目的に発足した辺野古基金の共同代表に映画監督の宮崎駿氏やジャーナリストの鳥越俊太郎氏らが就任した。寄付金は5億1千万円を超えている。
 沖縄の民意に賛同する言語学者ノーム・チョムスキー氏や映画監督オリバー・ストーン氏らが共同声明を発表し、海外の文化人109人が署名した。米国では2市議会が新基地建設に反対する決議を可決している。
 翁長知事が国連人権理事会で、基地問題は人権問題であると国際社会に呼び掛けたことも特筆に値する。
 強固な沖縄の民意のうねりをさらに広げ、新基地建設断念に国を追い込みたい。