<社説>’15回顧 県経済 優位性向上し好調維持を


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 ことしの沖縄経済は好調に推移した。観光が引っ張り、個人消費も堅調だった。アジアの巨大市場との交易拡大、観光入域客のさらなる増加などを目指し、沖縄の優位性を生かす取り組みも加速している。成長戦略の着実な実践が求められている。

 日銀那覇支店による12月の県内企業短期経済観測調査(短観)で、企業の景況感を示す業況判断指数が全産業でプラス45となった。1974年の調査開始後、最高値を記録した。
 完全失業率は改善基調が続く。好調な観光などが押し上げ、11月の県内有効求人倍率(季節調整値)は0・91倍で本土復帰後の最高値を4カ月連続で更新している。
 一方、好景気の陰でサービス業や建設業などで人手不足が続き、好況の足かせになりかねない。給与を上げても従業員の確保がままならない企業もある。待遇に加え、働きやすさの向上などの課題の解消が求められている。
 観光は絶好調と言っていい。外国人観光客の「爆買い」現象は県内でも見られ、観光客の旺盛な消費は沖縄経済に好循環をもたらした。
 11月までの累計は前年同期比9・8%増の714万9400人となり、12月を残して2014年(705万8300人)を上回った。
 うち外国人客は100万人を突破し、65・6%増の137万2900人で過去最高を記録した。円安や航空路線拡大、クルーズ船寄港の増加などが押し上げた。
 県内で集積が進む情報通信関連企業の業種が多様化する中、世界を視野に入れたビジネスや人材育成の新たな取り組みが目を引いた。
 翁長雄志知事が経済政策の柱に据える県アジア経済戦略構想が9月にまとまった。同構想は(1)国際競争力ある物流拠点の形成(2)世界水準の観光リゾート地の実現(3)航空関連産業クラスターの形成-などの5本柱からなる。
 人口増を伴うアジアの成長を、沖縄の経済発展に結び付ける見取り図であり、それを実現するエンジンの推力をどう上げるか、具体策を着実に実行してもらいたい。
 県は、大型MICE(企業の報奨旅行や国際会議)施設の建設地を与那原町と西原町にまたがるマリンタウン地区に決めた。県は規模を最終調整中だが、経済効果が大きな展示会を誘致するため、県経済界から要望がある5万平方メートル規模の実現を模索すべきだろう。