<社説>新成人へ 沖縄の未来開く主権者に


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 あす11日は成人の日だ。県内では1万6666人、全国で121万人が大人の仲間入りをする。新成人の門出を祝福したい。

 県内自治体の多くできょう成人式が催される。新成人は保護者や家族、地域の先輩や学校の恩師など、成長を支えた周囲の人たちへ感謝の気持ちをまず伝えてほしい。
 新成人にふさわしい良識と自らの人生設計を描き、邁進(まいしん)する気概を持つことを望みたい。他人を思いやり、迷惑を掛けない自立した大人になり、社会と積極的に関わり、地域づくりの担い手になることを願う。
 県内で新成人となる人の大半が5年前の2011年3月11日当日か前後に中学校を卒業した。
 死者1万5894人に上る東日本大震災が起きた日である。高校生活など多感な少年期に被災地の苦難に思いをはせ、命の尊さを考える機会が多くあった世代だ。沖縄の普遍的価値観を示す「命どぅ宝」の言葉をかみしめ、自分と他者の命と尊厳を大切にする若者が増えれば、平和な社会が保たれる。
 新成人の大半が生まれた1995年は米兵による許し難い少女乱暴事件が起きた年だった。基地問題や若者の働き口確保などの経済振興が沖縄社会の重要課題として横たわり続けている。
 その一方、文化や芸能、ゆいまーる(相互扶助)などの魅力が脚光を浴びて沖縄ブームが到来した。高い失業率などの課題は残るが、総じて沖縄経済は成長軌道にある。沖縄の底力が増した20年間と新成人の歩みは重なっている。
 自らが育った地域と沖縄のことを知り、愛し、誇る心持ちを高めてほしい。そして、「基地がないと沖縄は成り立たない」など本土に広がる誤解を解き、沖縄の実像を国内外に発信する担い手となる素養を深めてもらいたいと思う。
 今、辺野古新基地の是非をめぐり、沖縄は紛れもなく歴史的に重大な岐路に立っている。
 新成人は、沖縄の未来を開き、民主主義社会を築く主権者への仲間入りも果たす。その自覚を強めてほしい。20歳以上は選挙権を手にする。今夏の参院選から18歳にも選挙権が与えられる。
 政治的無関心と決別しよう。政治に関心を持ち、沖縄が置かれている状況や政治について同級生や友人、家族と大いに議論を交わし、1票を投じる権利を着実に行使してもらいたい。