<社説>代執行訴訟弁論 徹底審理で本質に迫れ


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 米軍普天間飛行場の移設に伴う辺野古新基地建設に向けた前知事の埋め立て承認を取り消した処分をめぐり、国が翁長雄志知事を訴えた代執行訴訟の第2回口頭弁論が開かれた。

 「法的根拠がないのに辺野古移設を強行するのは県の自治権の侵害、違憲だ」とする県側に対し、国側は「移設は日米安保条約に基づいており、合憲」と訴え、基地建設は地方自治体の事務ではなく、自治権を侵害しないと反論した。さらには審理の迅速な終結を求めるなど、県、国双方の主張は鋭く対立した。
 注目されるのは、多見谷寿郎裁判長が行政不服審査に加えて、代執行訴訟も提起した国側の姿勢を疑問視したことだ。
 多見谷裁判長は「防衛局長も国交相も行政主体としては国だし、行政組織としても内閣の一体の下にある。簡単に『行政不服審査は関係ない』という話にならない」と述べ、詳細な説明を求めた。
 当然の疑問だ。言うまでもなく行政不服審査法は民間人を行政の強権から守るための法律だ。政府は行政不服審査法に基づく承認取り消し執行停止の際は「私人」とした一方で、今回の訴訟は「国」として提訴した。
 法を恣意(しい)的に解釈して、都合よく立場を使い分けるのは行政法学者の指摘を待つまでもなく、おかしい。裁判長は、政府主張の矛盾を論理的に見極めてほしい。
 また、訴訟進行について国側は代執行訴訟には迅速さが求められるとして早期終結を訴え、県側は必要な手続きも経ずに国が代執行訴訟に突入したなどと強調し、十分な審理をするよう求めた。姿勢の違いはより鮮明だ。
 国側は「国として証人尋問は不要と考える」と主張する。しかし戦後70年を経過しても続く過重な基地負担の問題や、移設反対の民意が選挙で明確に示されたにもかかわらず、国は移設を強行し、対話による解決を放棄して裁判に訴えたことなど、沖縄問題の現状とその本質に迫る審理を行うためには、翁長知事や稲嶺進名護市長ら本人・証人尋問がぜひ必要だ。
 徹底した審理を尽くし、いま沖縄に対してなされていることが健全な民主主義なのか、この状況が本来の地方自治の在り方なのかなど、司法として冷静に見極め「沖縄、そして日本の未来を切り拓(ひら)く」判断をしてほしい。