<社説>名護市全域で飛行 新基地できれば危険さらに


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 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴う新基地建設は、危険性や騒音被害が名護市全域に移ることにほかならない。そのことがあらためてはっきりした。

 名護市が作成した2013年4月1日現在の飛行訓練図によると、米軍普天間飛行場所属のオスプレイはキャンプ・シュワブ内の着陸帯周辺の民間地上空だけでなく、西海岸の許田、幸喜など市全域で飛行している。
 衆院予算委員会で赤嶺政賢氏(共産)が、新基地ができれば飛行訓練、騒音被害ともなくなるのかとただしたのに対し、安倍晋三首相は「影響が最小限となるよう努力を重ねたい」と述べた。
 米軍機の夜間・早朝訓練についても物言わぬ日本政府である。信用できない。新基地建設後も訓練用の着陸帯がある以上、市全域での飛行は継続されるとみていい。新基地建設で飛行頻度が増え、危険性がさらに高まることは確実だ。
 中谷元・防衛相は「経路等については確認していないが、航空機の騒音軽減は大変重要な課題と認識している」と答えた。騒音軽減を重要課題としながら、経路を把握していないとは無責任にも程がある。
 防衛相はシュワブ周辺の学校への防音工事を助成しているとした。だが、それは新基地完成を先取りする形で騒音被害が拡大していることを示す。新基地ができれば、騒音が増すことは想像に難くない。
 にもかかわらず防衛相は「海上における離発着場の完成により、一般の住宅地の上を通ることはないため、騒音被害は出ない」と断言した。一体誰が信じるだろうか。宜野湾市の調査では経路を逸脱した飛行が常態化していることが分かっている。
 防衛相も普天間飛行場の飛行経路に関する質問に対し、ヘリは気象条件に影響を受けるため「列車がレールを走るように定められた所だけを飛行することはできない」と述べている。明らかに矛盾する。
 新基地は強襲揚陸艦も接岸でき、基地機能が強化される。それを単に「離発着場」としたことも許し難い。
 政府答弁から浮き彫りになったことは、名護市民に普天間飛行場の危険性が押し付けられるということだ。それが半永久的に続くのである。しかもオスプレイは県内各地で飛行している。普天間飛行場の県内移設が沖縄の負担軽減にならないことは明らかだ。