<社説>電力全面自由化 利用者本位の料金体系に


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 ことし4月から電力の小売り全面自由化が始まる。小売り電気事業者3社が沖縄県内で電気の小売り事業に参入を表明したり、検討したりしていることが明らかになった。経済産業省によると、これ以外にも複数社の沖縄参入の動きがあるようで、県内でも電力自由化の動きが本格化しそうだ。

 自由化によって再生可能エネルギーなどの普及で発電の多様化が進み、値下がりが進むとみられている。環境保全にも利用者負担の軽減にもつながるなら、自由化を大いに歓迎したい。
 電力小売りの全面自由化は全国10社の大手電力による電力販売の地域独占を完全に撤廃する規制緩和の取り組みだ。
 2000年から工場やオフィス向けで自由化が段階的に進められてきた。そして4月からは家庭向けも自由化される。利用者は電力会社を自由に選べるようになる。新たに開放される市場は8兆円規模とされており、異業種の新規参入で、電気料金の引き下げやサービス競争の活発化が期待される。
 東京電力福島第1原発の事故の後、全国の原発停止で電気料金が上がった。首都圏は計画停電も余儀なくされた。大手電力だけに供給を任せる仕組みを見直す機運が高まったことは当然の成り行きだ。
 県内の電力使用量は2014年度が約75億3千万キロワット時で、最大電力は139万6千キロワットだ。日本復帰の1972年と比べて約4倍に増加している。県内は人口増を背景に電力使用量も年々増加傾向にある。沖縄電力は24年の電気使用量を約81億3100万キロワット時と想定している。増大を続ける県内電力市場に、新たな競争原理が働くのは健全なことだ。
 沖縄は多くの離島を抱え、県外から独立した電力系統となっている。沖縄電力は本島内に大規模な火力発電所などを整備しているほか、離島では内燃力発電やガスタービン発電など、規模の小さな火力発電設備を整備している。
 全国的にも小規模系統による発電のため、構造的に電気料金が高くなってしまうという。
 県の試算では電気事業者の新規参入で県内の電気料金が1~10%程度引き下げられるとみている。沖縄電力も「競争力を高めていきたい」との姿勢を示している。全面自由化でいっそう利用者本位の料金体系につなげてほしい。