<社説>辺野古受注天下り 事業の公正さの疑念払拭を


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 国民の血税を使う公共事業の発注には厳格な公正さが求められる。

 防衛省関連の事業をめぐり、防衛省OBらが天下りした業者が受注している実態が明らかになった。
 “天下り天国”が温存されているとの疑いを持たざるを得ない。
 2013年12月~15年11月末の約2年間、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設の関連業務や工事をめぐり、受注した65社のうち、少なくとも14社に防衛省や自衛隊OBが再就職していた。この期間は、辺野古移設を伴う新基地建設に向け、仲井真弘多前知事が埋め立てを承認した後とほぼ重なる時期だ。
 防衛省内の移設工事が本格的に動きだし、14社もの受注企業に同省OBが再就職していた事実は重い。OBが受注を働き掛ける構図がなかったか。事業の公正さに疑念が付きまとう。払拭(ふっしょく)すべきだ。
 14社は職員らが退職後2年間に再就職した企業である。利益誘導を避けるため、防衛省の事前審査を受けた記録から判明した。
 中谷元・防衛相は「再就職の実績とは関わりなく、(発注は)適正に行われている」と説明しているが、果たしてそうか。
 2006年に天下り先確保を目的とする旧防衛施設庁談合事件が起き、幹部らが有罪判決を受けた。
 談合に加わったのは防衛関係事業の受注実績が大きい建設会社約60社だった。施設庁は解体され、その60社には防衛省職員や自衛官は再就職できない通達が出た。
 だが、退職から2年以内の再就職しか公表されず、2年たった後の天下りは実態がつかめない。防衛省への報告義務もない。14社以外にもOBが職に就いた実態があり、天下りした企業数はさらに膨らむ。14年7月には「震災復興や五輪事業の需要」を理由に幹部職員以外は自粛対象から外された。
 官製談合を防ぐために設けられた再就職自粛の決まりが骨抜きにされている。
 防衛省関連事業は、軍事秘密を盾にする形で事業内容が封印される傾向が強い。透明性が不十分なため、OBが受注に関与しやすい構図がある。
 辺野古移設関連では、環境保全を審議する第三者委員会の委員が受注企業から多額の寄付金を受けていた事実も発覚した。
 天下りにより、特定の業者のみが潤う癒着につながりかねない構図を改め、公平性、透明性を確立する手だてが必要ではないか。