<社説>防衛省態勢強化 民意の曲解は許されない


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 辺野古新基地の建設を拒否する沖縄の民意を見誤ってはならない。政府の都合で曲解することは断じて許されない。

 政府は辺野古新基地建設に向け、防衛省職員を増員する方針を決めた。担当する大臣官房審議官や大臣官房参事官を新設する。土木建築に詳しい国土交通省の職員も出向する。
 埋め立て本体工事に向けた態勢固めである。宜野湾市長選で現職の佐喜真淳氏が再選されたことで政府が意を強くしたのであれば全く論外である。
 政府は一層、新基地建設推進の姿勢を強化することが予想される。しかし、今回の選挙結果で沖縄の民意が変わったと解釈することはできない。佐喜真氏は一貫して新基地建設の賛否を選挙戦で明言しなかったからだ。
 佐喜真氏の再選は普天間飛行場の危険性から逃れたいという市民の切迫感の表れだ。政府は飛行場即時閉鎖など危険性の除去に努めるべきだ。
 米軍キャンプ・シュワブのゲート前や海上での抗議行動、県民大会や集会の開催を通じて、県民は新基地阻止の意思を明確に示してきた。世論調査でも7~9割の県民が新基地に反対している。政府はそのことを軽視してはならない。
 選挙後の記者会見で菅義偉官房長官が「オール沖縄という形で沖縄の人が全て(辺野古移設に)反対のようだったが、言葉が実態と大きく懸け離れている」と沖縄側をけん制した。これこそ政府の都合に合わせた露骨な民意のつまみ食いというべきものだ。
 菅氏に同調し「辺野古移設も選択肢に加えてほしい」と発言した島尻安伊子沖縄担当相にしてもそうだ。佐喜真氏再選を踏まえ「普天間の一日も早い危険性除去と全面返還を求める声が、辺野古移設に反対する声に勝った」とも述べるが、民意軽視も甚だしい。
 島尻氏は前回の参院選で掲げた「普天間県外移設」の公約を撤回し、県民の厳しい批判を浴びたのを忘れたのだろうか。本来ならその時点で辞職し、信を問うべきだったのだ。
 政府と県が普天間飛行場返還・移設問題について話し合う協議会の初会合が28日にあった。次回以降、具体的に基地負担軽減策を話し合う予定だが、新基地建設を強要する場であってはならない。振興策を絡めて沖縄側の懐柔を図ることなど、もってのほかだ。