<社説>高浜原発再稼働 再処理のめど立たず拙速だ


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 関西電力の高浜原発3号機(福井県)が再稼働した。原子力規制委員会の新規性基準に適合した原発では、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)に次いで3基目となる。プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使うプルサーマル発電としては初の再稼働である。

 通常のウラン燃料を原発で燃やした後に出る使用済み燃料は、青森県六ケ所村で再処理することになっている。しかし高浜原発3号機で使用されるMOX燃料の使用済み燃料は六ケ所村では再処理できない。
 MOX燃料の処分方法は決まってなく、新たな「核のごみ」を生むことになる。使用済み燃料の中間貯蔵施設の立地も決まらず、保管プールが7~8年後に満杯になるといわれている。問題を先送りにして再稼働に踏み切ったことは大きな過ちだと言わざるを得ない。
 福井地裁は昨年4月、2基の運転を差し止める仮処分を決定した。しかし12月に別の裁判長が取り消したため、法的にも運転できる状態になっていた。
 再稼働差し止めを判断した裁判長は全国の原発で過去10年足らずの間に5回、電力会社の想定を超える地震があったと指摘し「基準地振動を超える地震が到来しないというのは根拠に乏しい楽観的見通しにすぎない」と批判した。
 関西電力は高浜原発に防潮堤や防潮ゲートを建設したり、電源設備を整備したりした。しかしテロ対策で設置が義務付けられている「特定重大事故等対処施設」の工事が残されている。関電の「原発の安全確保に万全を期していく」との言葉をそのまま信じることはできない。
 住民避難計画が必要な半径30キロ圏に複数府県が含まれる原発の再稼働も、新規制基準の施行後初めてとなった。圏内には福井、京都、滋賀の3府県が入っている。
 京都と滋賀両府県の知事は立地自治体並みの同意権を要求した。しかし政府と関電は受け入れず、地元同意は従来通りに原発が立地する福井県に限定した。これでは民意を十分にくみ取ったとは言えない。安全に自信があるのなら、京都と滋賀両府県に納得できる説明をした上で同意を得るのが筋だ。
 十分に民意をくみ取らず、使用済み燃料の再処理のめどが立たない中、新たなツケを次代に残した形の再稼働は拙速で容認できない。