<社説>組み体操事故防止 優先すべきは子の安全


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 大阪市教育委員会は市立小中高校で組み体操事故が相次いだことを受け、四つんばいの姿勢で積み重なってつくる「ピラミッド」と、肩の上に立ってつくる「塔(タワー)」の禁止を決めた。

 大阪経済大の西山豊教授の調査によると、2012、13年度の組み体操による児童生徒1万人当たりのけが人は、沖縄は4・1人で全国32番目だった。県内でも対応が必要だ。
 学校現場からはピラミッドなどをつくることで「規律性や達成感など得られるものがある」との意見がある。何度も失敗しながら挑むことで、児童生徒間に強い連帯感が生まれ、成功した時の達成感は格別だろう。困難を乗り越えてやり遂げることの大切さを体験的に知ることで、教育的な効果もある。
 だがそれと引き換えに、子どもたちを危険にさらしていいのだろうか。子どもたちの安全こそ優先すべきである。
 スポーツには危険がつきものとの意見もある。ほとんどのスポーツは自由に動いて危険を避けることができる。だが四つんばいの状態のピラミッドで、とっさに危険を避けることは不可能に近いだろう。崩れれば下段にかなりの重量がのしかかり、重傷事故につながる恐れがある。
 1990年には福岡県の高校で練習中にピラミッドが崩れ、最下段中心部にいた生徒が首の骨を折って全身まひになる事故が起きている。
 日本スポーツ振興センターによると、組み体操が原因で医療機関を受診した全国の小中高校生の医療費受給件数は2011年度8264件、12年度8883件、13年度8561件、14年度8592件に上る。14年度の負傷の内訳は骨折1457件、捻挫1736件、挫傷・打撲2398件などだった。
 ここ数年、組み体操の危険性が指摘され、学校現場でも安全策を強化していよう。それでも事故は4年連続で8千件を超えているのである。この状況は何としても改善しなければならない。
 ピラミッドや塔づくりだけが、規律性や達成感を得られるというものでもあるまい。県内では、組み体操の代わりに空手演武を運動会に取り入れた小学校もある。ピラミッドづくりに固執することが子どもたちにとっていいことなのか。考え直したい。