<社説>県政運営方針 新基地阻止へ次の一手を


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 翁長雄志知事が2016年度の県政運営方針を発表した。15年度に引き続き、「辺野古に新基地は造らせない」ことを県政運営の柱に据えた。併せて「県民の過重な基地負担の軽減を実現するべく、公約の実現に向けた具体的な取り組みを着実に実施する」と表明した。

 不退転の決意は十分感じられたものの、物足りなさは否めない。「具体的な取り組み」の中身に言及しなかったことが大きい。
 だが、この日は県政全般にわたる「方針」の説明の場だった。知事は「具体的な取り組み」を当然持っているはずである。新基地建設阻止に向けた力強い次の一手を早急に打ち出すことを求めたい。
 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴う新基地建設をめぐり、県と国はそれぞれ訴訟を提起している。代執行訴訟で裁判所が提示した和解案が成立する可能性は低いだろう。知事は「県の考えが正当であることを主張・立証していく」と述べたが、判決の行方は予断を許さない状況にある。
 知事選をはじめ14年に実施された一連の選挙で新基地建設反対の圧倒的な民意は示されてはいる。だが、国は民意を無視して作業を強行している。このため県民の中には、このままでは国に押し切られてしまうのではないかとの懸念も出ている。
 このような現状を打破するには民意の大きなうねりを再構築し、国の理不尽な姿勢を内外に示すことで国を追い込む必要がある。普天間飛行場の即時閉鎖、県外移設へと、国の施策を転換させる新たな策を打ち出す時期に来ている。
 基地問題以外の課題も山積している。知事は子どもの貧困問題解決に向け、30億円の「県子どもの貧困対策推進基金」の設置による市町村の取り組み支援や、経済・労働団体や市民団体などで構成する「県子どもの貧困解消県民会議(仮称)」の立ち上げを表明した。
 全ての子どもが望ましい環境で育つことを保障するスタートの年になることを期待したい。
 知事は経済や文化の振興、教育、福祉、保健医療などの充実についても実現する決意を表明した。いずれも県民生活に密接に関わる分野である。県政運営方針で挙げた施策は県民との約束である。意気込みを成果につなげることを求めたい。