<社説>外国籍児就学不明 全自治体が把握すべきだ


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 県内5市に住民票がある外国籍の子どものうち、義務教育年齢の100人が公立の小中学校に在籍しておらず、就学しているかが不明となっている。琉球新報が10市に確認したところ、5市が就学の有無を把握していなかった。就学していない子どもが存在する可能性がある。子どもの学ぶ権利を保障する上でも由々しき状態だ。全ての自治体は速やかに全員の就学状況を把握する必要がある。

 全国を見ると、外国籍の子ども約10万人のうち少なくとも約1万人は自治体が就学の有無を調査していない。なぜ調査していないのか。日本人の場合は公立校に籍がない場合、通常は他校への就学状況や事情を把握する。しかし外国人の場合は就学を義務付ける対象外だとして、確認作業をしていない自治体が存在する。
 外国籍の子どもは公立校に在籍していなくても、私立校やアメリカンスクール、フリースクールなどに通学していたり、住民票を残したまま帰国したりしている場合も考えられる。把握できない子ども全員が未就学ではないだろう。しかし自治体が調査で把握しなければ、実際に就学していない子どもは救済されぬまま放置されてしまう。人権上も大きな問題だ。
 県内4市は公立校に在籍していない外国籍の子どもの追跡調査を実施している。このため4市は全員の就学を確認しており、不明の子どもはゼロとなっている。調査していない市は「外国籍の児童生徒は保護者から申請があって通学許可を出す。申請がない場合は把握しようがない」と説明している。しかし実際に調査をしている市がある。何とか把握する方策を探してほしい。
 「子どもの権利条約」は子どもの基本的人権を国際的に保障するために定められ、1989年に国連総会で採択され、90年に発効し、日本は94年に批准している。条約は「生きる権利」など四つの権利をうたっており、その一つが教育を受けることを保障する「育つ権利」だ。
 子どもは発達し、成長していく途上にある。国や社会は子どもの生きる権利だけにとどまらず、健やかに育ち、学べる環境を整える責務がある。それは自国民に限らない。外国籍の子どもにも「育つ権利」を保障するためには、まず全ての自治体が就学の有無を調査し、把握すべきだ。