<社説>米軍ごみ 治外法権が諸悪の根源


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 米軍は日本のルールを守らない。これもその実例の一つであろう。

 県内の米軍基地が2014年度に排出した一般廃棄物(ごみ)が2万3064トンだったことが分かった。米軍は11年を最後に軍人・軍属・家族の総数を公表していないため詳細は不明だが、仮に11年の人数で割ると1人1日当たり排出量は1335グラムとなる。県民830グラム(13年度)の1・6倍だ。
 米軍は、県民と同じ程度には分別を実行していない。そう考えない限り、説明がつかない開きである。分別を実行していないなら、注射針などの危険ごみが一般廃棄物に紛れている恐れもある。危険極まりない。
 問題は、なぜこうなったかだ。
 日米地位協定第3条により、日本にある米軍基地は米軍が全ての権限を持ち(排他的管理権)、日本側は口出しできない仕組みである。基地内に日本の法令を適用しない、すなわち治外法権としているのだから、ごみの排出ルールが守られないのも当然だ。治外法権を許す「不平等条約」を放置する限り、この種の問題が繰り返されるのはいわば必然なのである。
 この排他的管理権は、諸外国の米軍基地も同じだと思われがちだが、間違いだ。ドイツにある米軍基地はドイツ国内法順守が義務付けられ、韓国で環境汚染があれば米国が浄化の義務を負う。
 現状を抜本的に是正するのは、日米地位協定の排他的管理権を改めない限り不可能である。政府は抜本改定を交渉すべきだ。もししないのなら、外交・安全保障を「国の専管事項」とせず、少なくとも在沖米軍基地に関しては交渉権を沖縄に委ねるのが筋であろう。
 県環境部は、基地からの1人当たり排出量は県民の2倍程度とみている。米軍の排出量は過去5年間、2万トン台で推移しており、抜本的減量化には程遠いのが現状だ。
 米軍基地は、沖縄側の意思を問うことなく日米両政府が勝手に沖縄に置いているのだから、政府には現状を改める義務がある。最低限、ごみ分別ルールの順守を要求すべきだ。そしてその交渉結果を県民に開示してもらいたい。
 さらに言えば、廃棄物、なかんずく危険ごみ・有害ごみは米国に持ち帰らせるのが筋だ。少なくとも、県が求めているように、米国の責任で廃棄物焼却施設なども整備させたい。基地返還時の米国の原状回復も義務付けるべきだ。