<社説>G20声明 脱「金融政策依存」へ転換を


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 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、世界経済の安定に向けて各国が公共事業などの景気対策を含むあらゆる政策を講じるとした声明を採択した。会議では通貨の切り下げ競争もせず、利上げなどの経済政策を決める際には他国への影響を見極めることでも一致した。

 中国経済の減速や米国の利上げ、原油価格の下落などが複雑に絡み合い、年明けから各国の市場は混乱している。
 一国だけの対応ではこれを解決することはできない。各国が協調して取り組む必要がある。その意思は声明で示された。だが期待された具体的な取り組みは各国に委ねられた。
 共有した危機感を実効性のある政策に反映させることができるのか。協調して混乱収束に当たることができるのか。それが今後、各国に厳しく問われる。
 世界経済が急速に落ち込んだ2008年のリーマン・ショックの際はG20各国が協調して対応し、混乱収束に一定の効果を上げた。だがその当時とは情勢が大きく変化している。各国の経済政策の方向性が違っていることが最大の懸念材料である。
 日本と欧州は物価を押し上げるためマイナス金利政策を導入している。米国は景気過熱を懸念して昨年12月に利上げに踏み切った。利上げによって資金が流出する新興国とは利害が対立する。
 中国が財政出動に前向きな姿勢を示す一方で、財政黒字で余裕のあるドイツは大規模な経済対策に慎重である。
 各国がその違いを乗り越えて協調できるかに、世界経済の安定は懸かっている。「政策を総動員する」とした声明に反し、各国で今後も対応が食い違うようなことになれば、世界経済の安定への道は遠のく。
 声明は「金融政策は経済活動と物価の安定を支えるが、金融政策のみでは均衡ある成長につながらない」と指摘し、「成長、雇用創出、信認を強化するため機動的に財政政策を実施する」ことを打ち出した。
 経済成長を日銀によるマイナス金利などの金融政策に頼る日本への警鐘だと受け止めたい。日本も合意した以上、過度の金融政策依存から脱却すべきだ。企業が長期にわたって活力を維持でき、世界経済にも貢献する力強い経済政策へと転換する必要がある。