<社説>児相、介入に特化 子のために最善の対策を


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 厚生労働省の専門委員会は、児童相談所の役割を被虐待児の一時保護など強制措置を伴う「介入」と、一時保護した子どもを親元に戻す際の「支援」に特化する最終報告書をまとめた。

 SOSを発する子どもにとって最善の対策になるよう、報告書を踏まえ、国や各自治体は早急に児童福祉法の改正と実態に沿った施策を行ってほしい。
 全国の児童相談所が2014年度に対応した児童虐待の通告は約8万8千件で過去最多だ。1990年度の集計開始以来24年連続の増加で、初めて8万件を突破した。このうち県内は478件で過去最多だった。13年度の348件から37%増加した。
 最終報告書は、児相の負担を軽減し体制を強化するため、現在は都道府県や政令市にのみ設置が義務付けられている児相を、那覇市などの中核市や東京23区にも設置する。児相が現在担っている育成や養護、非行の「相談業務」は市区町村に移行させる。
 虐待の通告を受けた際の窓口を都道府県などに設置する機関に一元化し、緊急性に応じて警察や児相、市区町村に対応を振り分ける取り組みを試験的に実施するよう求めている。
 報告書の趣旨は理解できるが、現場の人手不足の解消や、専門知識を持つ人材の育成など多くの問題を抱えている。児相を拡大するために、心理学などを学んだ児童心理司や児童福祉司、幅広い事案に対応できる人材確保を急ぐべきだ。振り分けについては誰が、どのように行うのかという点を整理しなければならない。人口や財政、職員規模は市町村で異なるため、全国一律適用に向け財政措置なども今後、詰めなければならないだろう。
 報告書は児相が「介入」と「支援」に特化することを求めている。しかし一つの機関が強制力を伴って介入し親子を分離、その後親元に戻す支援をするのは無理があるとの指摘がある。欧米は別々の機関が担うという。児相の力を最大限に発揮できる役割分担について、なお検討が必要ではないか。
 虐待の背景として経済格差や家庭の孤立も指摘されている。特に県内の貧困状況は全国的に見ても深刻だ。家族への経済的支援と同時に、家庭が困った時に一声掛け支えられる地域力を高めたい。