<社説>是正再指示 民主国家として恥ずかしい


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 どう言い繕おうと、地方自治に関する基本知識と哲学が欠如した、民主国家として恥ずかしい振る舞いである。辺野古新基地建設をめぐる知事の埋め立て承認取り消しについて、国交省はいったん出した是正指示を16日に撤回し、指示の理由を付け足して出し直した。

 なぜ恥ずかしいかを説明しよう。
 そもそも地方自治法改正は、国と自治体が「対等」の関係になったのを受けてのものだ。だから改正地方自治法は、第245条3で自治体の事務に関する国の「関与」は「最小限度」にするよう求めている。さらに国に対し、自治体の自主性と自立性への配慮義務を課している。
 従って、国が注文を付けること、まして「是正の指示」など、本来なら避けるべきなのだ。
 それなのに国は代執行訴訟を取り下げる和解からわずか3日後、県との協議のはるか手前で是正指示を出した。改正の趣旨に反する1点目がこれだ。「最小限」にする姿勢など、薬にしたくも無い。
 2点目は、最初の是正指示に理由の記載を欠いたことだ。地方自治法改正の二つ目の趣旨は「公正性・透明性の確保」である。水面下での口利きが行政をゆがめるとの認識があるからだ。だから国の関与は必ず書面にするよう求める「書面主義」が原則なのである。
 法249条が是正指示の際に「要求の内容と理由を記載した書面」の交付義務を課すのはこの透明性を確保するためだ。だから記載を欠くのは、改正の趣旨が分かっていないとしか思えない。
 法にある義務すら見落とすほど、国交省は慌てて是正指示を出したのだろう。そしてその欠落を指摘した県の係争委申し出の翌日、再び慌てて出し直した。慌てること自体、「配慮義務」に背いている。
 翁長雄志知事が「地方自治法の趣旨を理解いただいていない」と評したのもむべなるかな、である。
 県は再び国地方係争処理委員会に審査を申し出ることになろう。知事の承認取り消しに対する国の執行停止について、同委員会は審査申し出を却下した。同委員会が扱うのは「国の関与」と定められている。だが執行停止は「関与」でなく「決定」だとして却下となった。だが是正指示は紛れもなく「関与」だ。審理対象となるのは間違いない。
 委員会は今度こそ、民主制と国からの独立という地方自治の本旨に照らし、適切に審理してほしい。