<社説>土曜保育 待遇改善に政府の補助を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 保育士不足が深刻な水準になっていることの表れだろう。那覇市が、土曜日はなるべく保育園に園児を登園させず、家庭で過ごすよう求める協力願を配布した。市長名での依頼は初めてだ。

 保育士は土曜に勤務すると平日に代休を取ることになるが、人が少ないと代休を取りづらい。保育士に「せめて週休2日を実現させたい」という園長らの願いに共感する人は多いだろう。親が仕事や病気の時は当然預かるが、休みの場合は家庭で保育をという内容で、急場をしのぐ方策として一定の理解はできる。
 だが仕事以外の用事もある。仕事が休みだからといって預けることを躊躇(ちゅうちょ)しなければならないわけではない。県内はサービス業が多いから日曜勤務の人も多く、休めるのは土曜だけという親もいる。預けたい事情はさまざまあるはずで、本来は代休取得が確実にできるよう保育士を確保するのが筋だ。
 やはり待遇改善が急務である。昨年度の県内潜在保育士就職セミナー参加者アンケートによると、保育士復職をためらう最大の理由が「勤務時間や休み」だ。2番目は「家庭との両立」だが、こちらも実質的には勤務時間や休みの問題であるのは想像に難くない。
 県の2013年度保育士確保支援事業調査でも、保育士から「仕事の量が多過ぎ、定時に帰ることはほとんどない。この状態では子どもができたら仕事を続けるのは非常に難しい」との声が上がった。仕事量や責任の割に給与が安いともよく言われる。保育士をやめる人を防ぐ意味でも、これから保育士を目指す人を増やす意味でも、抜本的な待遇改善が必要だ。
 保育園の新規開園があると、周囲では保育士の引き抜きを心配する声が上がるという。待機児童対策として保育施設の増設が言われるが、ハードの増加より実はソフト充実の方が喫緊の課題と言える。
 待遇改善のための補助にもっと政府予算を投じるべきだ。「子育て支援」を打ち出したはずの今回の補正予算で保育所整備に充てるのは500億円だが、国が参院選前に配布する高齢者給付金の総額は3900億円だ。米軍への巨額の思いやり予算、自衛隊の3千億円にも上るオスプレイ購入費など、無駄と思われる予算は各所に潜む。
 結局、保育士不足は為政者の優先順位の誤りに帰着しよう。もっと為政者の責任を問うべきである。