<社説>政府・県協議会 中身ある「負担軽減」を


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 政府はことあるごとに「沖縄の負担軽減」と繰り返す。だがその言葉に中身が伴った例は数少ない。常に新たな負担や条件がある。

 負担軽減や振興策などを話し合う「政府・沖縄県協議会」が開かれた。米軍普天間飛行場の辺野古移設をめぐる訴訟の和解後、初めて県・国双方が同じテーブルに着いた。今後作業部会を設置して話し合う予定だが、「負担軽減」を言葉だけに終わらせてはならない。
 会合で県側は普天間飛行場の2019年2月までの運用停止を求めたが、政府から明確な返答はなかった。一方で政府は辺野古移設への協力を要請したという。
 普天間飛行場の運用停止は前知事が求め、政府が14年2月18日を起点とし、実現を目指すとの答弁書を14年10月に決定した。
 自ら約束したことをなぜ守れないのか。実行できないのであれば、その場しのぎの方便と受け止められても仕方ない。さらに「円満解決に向けた協議」を求める和解条項に照らせば、県民の多数が拒否する辺野古移設への協力を持ち出すこと自体が誠実さを欠く。
 一方の当事者である米国が辺野古移設に固執していない状態で「唯一の解決策」と繰り返し、移設を強行しようとする日本政府は強権的としか言いようがない。
 こうした政府への危機感は沖縄だけにとどまらない。翁長雄志知事の就任後、県外8都府県の23議会が辺野古移設計画に疑問を呈し、地方自治の理念を損なうとして意見書を可決している。各議会の意見書は、政府の姿勢を「まさに異常」(福島県石川町、福岡県嘉麻市)と批判する。根底にあるのは「地方自治の形骸化につながる全国的な問題」(福岡県中間市)という沖縄への共感だ。
 政府は普天間飛行場の返還・移設を検討するに当たり、沖縄をはじめとする地方の声に耳を傾けるべきだ。なおも民意と懸け離れた辺野古移設を強行するのであれば、民主主義国家の名に値しない。
 普天間飛行場移設以外にも県と国の協議会では北部訓練場返還も議題となる。
 訓練場の周囲に広がるやんばるの森は国立公園に指定される。東村高江集落を取り囲むように建設されるヘリコプター着陸帯も条件となっている。数字上は「過半の返還」だが、「軽減」とは言えない。政府は県民が納得する負担軽減策を提示し、実行すべきだ。