<社説>特定外来生物 辺野古の徹底調査に備えよ


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 国立公園指定が予定され、世界自然遺産も目指すほどのやんばるである。その貴重な生物多様性は何としても守らねばならない。

 那覇空港拡張に向けた埋め立て石材の採取地である奄美大島の採石場周辺で、特定外来生物ハイイロゴケグモが見つかった。県による専門家の現地調査で確認した。
 事業者である沖縄総合事務局は、採石場で石材を切り出した後、トラックに積んで上から水をかけて洗うという。港で積み替える際には鉄板を敷いた区画に石材を置き、地面との接触を避ける計画だ。
 だが上から水をかけるだけで死滅させられるのか、港の鉄板から地面に移動しないのか。県は有効な具体策のさらなる提示を求め、侵入防止を確実にしてもらいたい。
 今回明らかになったのは、県土砂規制条例の実効性をどう担保するかという問題だ。沖縄総合事務局の当初の調査では特定外来生物は見つかっていなかった。
 そもそも事業者は早く搬入したい側である。徹底した調査を自主的に行うと考えてよいだろうか。それを補うのが県の調査だが、委嘱している専門家は6人で、審査期間も90日間に限られる。
 今回の那覇空港の審査は採取地が1カ所だったから発見できた面もあろう。だが辺野古新基地埋め立てでの県外からの搬入は6県7地区だ。予定地にはアルゼンチンアリやセアカゴケグモなど、侵略性・毒性のもっと強い特定外来生物が9種も確認されている。
 那覇空港拡張に使うのは目視確認が比較的容易で、かつ水で洗える石材だ。だが辺野古に搬入するのは目視での確認も洗浄も難しい土砂であり、それも膨大な量だ。
 その上、事業者が新基地建設では沖縄の民意を歯牙にもかけぬ沖縄防衛局である。事業者自らによる徹底調査はまず期待できない。
 今回とは比較にならないほど困難な防止策を、事業者が非協力的という悪条件の中、実施しなければならないのだ。
 体制整備が必要だ。辺野古新基地の搬入申請が迫れば、県は担当課や専門家の体制を大幅に拡充し、徹底調査に当たってほしい。
 在来種を駆逐する生物の侵入を許せば、やんばるの貴重な生態系は壊れかねない。土砂規制条例には罰則がない。実効性ある防除策を講じない事業者には工事差し止めを命ずるといった条例の改正も、県や県議会は検討してもらいたい。